7 Days to End with You 17+

言語オタクなので、このゲームのシステムを知って、すぐ購入が決まった。確かに「その人」の言葉を少しづつ理解できるようになる過程が本当に楽しい！

言葉を教わっていると、周りのことも「自分」のことも「その人」のことも段々わかってくる。何だか一見平和そうな、何だか懐かしいような家の中に、仄めかされる一抹の不安と違和感に駆られつつも、物語の世界に入り込んでいく……

実はゲームのバグや操作感で苛々する時もありましたし、メカニズムが多少単調で重複感がありました。インディっぽく、洗練されていないところもあったけれど、ただ唯一、なぜかこのゲームには、他のゲームでは得られないような、唯ならぬ没入感を享受することができる。

なぜだろうと考えてみたところ、それはまさにコミュニケーション欲求という、人間の社会本能によるものなのではないかと思う。言葉を理解していくこと、それはつまり心と心の間の架け橋が築かれていくことである。似たように、人と犬猫とは言葉も通じず、到底真に分かり合えることがないだろうけれど、長い間付き合うことにより、互いに理解が深まることができ、それこそが絆を形作る。

この物語は、小説や映画として表現されても、恐らく私はあの結末にそれほど感動していなかったと思う。たとえ「その人」の言葉を未だに完全に理解していなくても、「その人」の気持ちが、はっきりと私の心に響き渡っていた。

BGMやヒロインのおしゃべりの間などが絶妙で、こんなにも閉鎖的な世界観なのにとても美しく切なく、終始見入っていました。システムも斬新で独特で、この手の思考パズル要素が大好きなので夢中になれました。しかしそれだけにストーリー部分とゲーム性がいまひとつで勿体ないと思いました。

・システムへの慣れとエンディングの乏しさ
→マルチエンディングと謳ってはいるのですがその分岐が大きく分けて二つしかなく、またこの二つも結果的に起こる事に大した違いがありません。もっと言うなら女性はひたすらに一人で喋っているだけなので(言葉を教えてくれているという設定上仕方ないのですが)コミュニケーションの実感が薄く、ミニゲームやたまの対話要素、イベント(これも数が少なく寝飛ばさなければ必ず起きる)もエンディングには一切干渉しませんので、言語パズルシステムに慣れ少し言葉がわかるようになれば二、三週目からはエンディング回収の為何もせずひたすら寝て最終日を待つだけの作業ゲーになります。本当にもったいない。他のレビューでも言われていた"夢から覚めるのが早い"がしっくりくるゲーム性でした。もっと対話の機会を増やし、ミニゲームやイベント、隠しパラメータ次第で様々なフラグが立つようなものだったら良かったなと思います。

・ストーリーが分かりづらい
→わざと考察の余地を残しているのかもしれないのでこればかりは好みによる所が大きいかもしれませんが、言葉が分からなくとも探索をしている内に視覚情報だけで自分の置かれている状況やヒロインの正体、やっていることなどが"何となく"分かるようになっています。逆に、言葉が分かり各種情報の解読が進めば進むほど、腑に落ちない点やハッキリとしない背景が出てきて、それに加えて前述のエンディングの変化のなさなので、考察を前提とするならもう少し別の視点や展開を経て真実に収束してゆく形が望ましかったです。

・独自言語が実在する言葉を基準にしたパターンであること
→「色んなものを色んなパターンで指して貰い共通点を見つけて言葉を記録してゆく」言語パズルシステム。面白くてのめりこみましたが、完全な造語ではなく法則に気が付けば一気に全て解読出来てしまう特定のパターンでした。"わからない"事を楽しむのか"わかる"事を楽しんでいくのかという好みで大きく評価が別れる点かな、と思いました。ヒロインは最初から共通言語を話しているのだがとある理由から主人公には解読出来ない、という核心に基づいているのかもしれません。

ゲーム内容は本当に良いです。未知の言葉の読解、夢中になりました！
でも、その「夢中」の時間が、思いのほか長く続かなかったかな、という気がします。相手の言葉が読み解けるようになった先に、ゲーム的な展開があまりないため、後半はやや徒労を感じました。
プロローグを読むにストーリー解釈をプレイヤーに委ねることを意図しており、よって「言語読解率が上がることのゲーム的な意味（ストーリー展開）」をつけづらかったのかなと思うのですが、一方でこのゲームのデザインは間違いなく「たったひとつの真実をみつける」モチベーションで引っ張るものなんですよね。未知の言語を喋る女の子の、言葉の意味を理解したいと思わせる構造なので、その点ではプレイヤーは一意な解答を求めており、個人に解釈を委ねる方向に進みようがないと思います。
この点のズレが序盤、中盤の「すごく面白い！」という感覚が、終盤は少しだけ陰ってしまう原因ではないかと思います。
ベースとなっているゲームは本当にとても良く、加えて雰囲気も良いため、「このゲームがプレイヤーにやらせること（言語読解）」に対する的確な報酬（快感）がもう少しだけデザインされていたら最高だったのに！　たとえばエンディング分岐は、言語読解とその結果もたらされるストーリー理解度で変わるようなデザインにもできたのではないかと思います。
とはいえ私にとって、現状でもとても価値のあるゲームでした。