アプリ開発の裏側に迫る

HIVの予防に光を当てる

Kevin Waltzさんが偏見を乗り越え、コミュニティに贈るアプリ。

「Preppy」を作ったKevin Waltzさんは、初めて自分がHIV検査を受けた時のことを鮮明に覚えています。10年間避け続けてきたその検査は、とても緊張するものでした。

「クリニックで2時間、周りに人がいる中で『自分はこれからどうなるんだろう』と考えていました」と Waltzさんは振り返ります。「検査担当者に調子を聞かれて、『最悪だよ』と答えてしまいました」

「Preppy」を使えば、いつ薬を服用したかを簡単に記録できます。PrEP(曝露前予防内服)の服用履歴や性交渉の履歴も一目で確認でき、性交渉があったにもかかわらずPrEPを服用しなかった日は赤く表示されます。

そんな不安な体験が、「Preppy」開発のきっかけとなりました。性の健康を管理するこのアプリを使えば、HIV感染リスクを軽減する薬「PrEP(曝露前予防内服)」の服薬を簡単に記録できます。

PrEPには、毎日服薬する方法と、必要に応じて服薬する方法の二つがあります。このアプリなら、どちらの記録も簡単です。目立たないようにデザインされたホーム画面のウィジェットをタップするだけで、服薬を記録できます。「Preppy」では性的接触について、極めて個人的な情報まで詳細に記録することもできます。

「Preppy」について語ることは、自分のとてもプライベートな部分、普段はあまり表に見せない一面をさらけ出すことでした
Kevin Waltzさん

「『なぜそんなアプリが必要なの?』と思う人もいるでしょう」とWaltzさんは言います。「しかし、健康管理は大切です。そしてそれと同じくらい、自分の性的活動やパートナーを記録することも重要です。驚いたのは、『Preppy』を健康管理だけでなく、生活の極めてプライベートな側面でも活用している人がいることでした」

「Preppy」をリリースする前にも、Waltzさんはいくつかのヘルスケアアプリを開発していました。YouTubeのチュートリアル動画を観ながら、独学でSwiftのコーディングを学んだ29歳の彼にとって、コーディングという趣味が仕事になるとは想像もしていませんでした。「最初は自分用に作っただけで、リリースするつもりはありませんでした」とWaltzさんは言います。

「Preppy」のリリース後、Waltzさんは再就職を目指す大人たちにSwiftのコーディングとプロダクトデザインを教えるようになりました。初めて生徒たちに「Preppy」のことを話した時、どう受け止められるかはわかりませんでした。

「ヘルスケア」タブの「予定」セクションでは、診察訪問の日時や検査結果を確認できます。アプリでイベントを追加する時に、「Preppy」には、カレンダーに追加できるオプションも備えられています。

「『Preppy』について語ることは、自分のとてもプライベートな部分、普段はあまり表に見せない一面をさらけ出すことでした」とWaltzさんは言います。「ただ自分の場合は、『Preppy』の作者は私で、誰でも見られるApp Storeに公開中、という感じでしたけど。それでも、一度もネガティブな反応を受けたことはありません」

現在、Waltzさんは医療教育関連のスタートアップ企業で働きながら、臨床心理学とデジタル心理学を学んでいます。「Preppy」の買収の申し出があったり、有料化を検討したりしたこともありましたが、結局どちらも選ばず、無料提供を続けています。

個人的なサイドプロジェクトとして始まったものが、今ではゲイコミュニティ全体への貢献になっています。「ボランティアの時間は取れなくても、自分のスキルで他の人を助けることはできます」とWaltzさんは語ります。