MEET THE DEVELOPER

感情が枯れるほどの
絶望を作った大学教授

限られた者だけが眺めた山の頂きを
教授はどのように作ったのか。

遊べばあなたも、きっと絶望感を味わう、「Getting Over It」というゲームがあります。攻略不能に思えるほど難解さで世界的に人気を誇るゲームです。さて、この奇妙なゲームは、一体誰が作ったのか。実は、大学教授が作ったゲームなのです。「Getting Over It」の開発者、Bennett Foddyさんはこれまでに、少なくとも3つの分野で活躍してきました。

元々は哲学の専門家でした。オーストラリアのバンド、Cut Copyでベースを弾く音楽家でもあり、そして現在は、「Getting Over It」を生み出したインディーズゲームデベロッパとして、世界にその名を知られています。ちなみにこのゲームは、壺に入った半裸の男がハンマーを振り回し、登るほど複雑さを増す奇怪な山の頂点を目指すという、実にシュールなものです。

「Getting Over It」は奇怪な山を登る過酷なゲーム。あなたはこの試練に耐えられるでしょうか?

「Getting Over It」は異常なほど難しいゲームです。

メルボルン大学で博士号を取得したFoddyさんは、現在ニューヨーク大学ゲームセンターでゲームデザインを教えています。Foddyさんは、プロトタイプの開発を通して、何度ミスしてもまた挑戦したくなる、ほどよい難易度のゲームを作る術を学んできました。

もっとも「Getting Over It」では、実験をする余裕はありませんでした。ゲームのデジタル配信サービスHumble Bundleから制作を請け負い、厳しいスケジュールでの納品を求められていたからです。Foddyさんは、iOS版開発の最終段階でデベロッパ仲間のMatt BochさんとZach Gageさんの助けを仰いだ以外、「Getting Over It」をほぼ独力で制作しています。

Foddyさんにとって、本作の大ヒットは予想外だったようです。

「Getting Over It」のアートデザインは、Jean-Léon Gérômeさんの絵画作品「ディオゲネス」(上)と、1985年のMichael Leunigさんの漫画にインスピレーションを受けています。

「こういうゲームに興味を持つのは、せいぜい2,000人くらいだろうと思っていました」と、Foddyさんは言います。「ものすごくマニアックで、特殊で、自分本位なゲームだという自覚がありましたからね。難しくてイライラするゲームを意図的に作っていたように思います」

意外なことに、この難しさが好評でした。他のプレイヤーが攻略に成功したり、失敗したりする様子を、「Twitch」のような動画配信サービスで視聴するファンも現れたのです。

頂上へ近づくほど、山はますます奇怪な姿に。

Foddyさんは、Philipp Stollenmayerさんによる物理パズルゲーム、「Zip—Zap」から大きな影響を受けました。最高に面白い瞬間は、あと一歩で成功というところでミスを犯してしまう、その時にあるのだと。

「あの"もう少し"という感覚が、とてつもなく興味深いものに思えるのです」と、Foddyさんは言います。「歌だったら、ちょっぴりキーを外して、"もう少し"で完璧というふうに歌うのが好きです。恋愛映画でも、"もう少し"で結ばれそうなのに、やっぱりうまくいかないというキャラクターがいいですね。そして、ゲームはそういった"もう少し"を引き出すのにうってつけなのです」

見よ、この無敵のハンマーを。

Foddyさんが指摘するように、1980年代には、苦労して最終ステージまでたどり着いても、やられてしまえば最初からやり直しというゲームは珍しくありませんでした。「一種のストックホルム症候群かもしれません」と、Foddyさんは言います。「でも、幼い私はそういうゲームを好むようになりました。こういった嗜好は、今も決して消えることなく残っています」

プレイヤーを慰め、イライラが軽減されるよう、「Getting Over It」には珍しい機能が2つ搭載されています。その一つは、プレイヤーの目の前の画面で起きていることについての、Foddyさんの肉声による解説です。「プレイ中に行き詰まってイライラする場面があっても、それは意図的なものであり、とにかく楽しんでもらうためにそうした作りになっているんだと、プレイヤーに知ってもらいたかったのです」

Foddyさんはこう続けます。「私の声はプレイヤーにとって、ある種の心の支えとして存在しています。一人の人間としてプレイヤーに寄り添っているのです」

そしてもう一つ、幸運にもゲームをクリアできたプレイヤーたちに向けて、Foddyさん宛てにメールを送ってほしいと訴えかけるメッセージも組み込まれています。

「メールは必ず読んでいます」と、Foddyさんは言います。「怒りをぶちまけてくる人もいますが、たいていの方は、エンディングにたどり着く頃にはもう、怒りや苛立ちといった感情が枯れ果ててしまうようです。悟りの境地めいたものに達していて、多くは私に対して、ある種の仲間意識を持ってくれているようにも思います」

これから仲間に加わろうとしている方へ、一応付け加えておくと、Foddyさん自身のクリア最短記録は35分だそうです。あなたも「Getting Over It」で複雑怪奇な山を登り切り、頂上からFoddyさんにメッセージを送りましょう。

    Getting Over It

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