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今年のベストゲーム

おじいちゃんの記憶を巡る旅

おじいちゃんの記憶を巡る旅

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2017年は良質なインディーズゲームが世界中のデベロッパから数多くリリースされました。革新的なゲーム性、創造性にあふれるビジュアル、そして独創的なストーリー。そのような、大手のデベロッパが手がけるゲームにはない体験を私たちにもたらしてくれるのが、インディーズ作品の魅力の一つではないでしょうか。

数ある2017年のインディーズゲームの中でも、我々、App Storeのエディターたちを特に驚かせ、感動させた作品があります。その作品の主人公は、輝く鎧を身にまとった騎士でも、スーパーヒーローでもありません。彼は、人生の終盤に差し掛かった、ごく普通の老人。

そして、この作品の名は「おじいちゃんの記憶を巡る旅」。

ウィーンを拠点とするデベロッパ、Broken Rulesによる本作からは、その独特なタイトル名を見た瞬間、何か特別なものを感じました。そもそも、「おじいちゃん」が主人公のこのゲームは、何をきっかけに生まれたのでしょうか?

「Broken Rulesは2009年から、4つのゲームを作ってきました。そしてその間、チームメンバーに合わせて8人の子供が生まれました。そんな理由からここ数年、『仕事と家庭の両立』が社内で大きな話題です。だからこそ、人生でその問題に苦しみながらも、家族との和解を求めて前進するキャラクターを描きたいと考えました。長い旅には瞑想的な側面もあり、その中で、長い人生を振り返ることができるキャラクターを求めていたのです」と、Broken RulesのCEO、Felix Bohatschさんは話します。

そのおじいちゃんの物語を進めるために、プレイヤーは彼の行く先を決める役割を担います。タップしたところに向かっておじいちゃんは歩きますが、地面や地形を動かして、彼が進むための道を作る必要があります。ステージ全体が一つのパズルになっているのです。この独創的なゲーム性は、友人の家にあった、丘の写真からインスピレーションを得たとBohatschさんは言います。

「なだらかに起伏した丘の写真でした。それを見たときに、指先でそのような丘を動かすというアイデアを思いついたのです」

そして彼らがこれまで手がけてきた他のゲームと同様、このゲーム性のアイデアを発端にプロジェクトが動き出したそうです。

フランスやイタリア、スペイン、スコットランド、ギリシャなど、実在する場所のポストカードにインスピレーションを受けています。

Broken Rules CEO Felix Bohatschさん

「iPhoneとiPadのタッチ画面で遊べるゲームを作ろうと思い、何回かアイデアを出し合いました。Clemens(Clemens Scott、Broken Rules共同設立者)に地形を形作るアイデアを話した時に、2人が個人的なレベルで共感できる体験を作ろうと決めました」とBohatschさんは言います。「フランスやイタリア、スペイン、スコットランド、ギリシャなど、実在する場所のポストカードにインスピレーションを受けています。映画では『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』や『The Illusionist〜イリュージョニスト〜』などですね。また、アイヴァンド・アール、井筒啓之、スコット・ウィルズといった画家やイラストレーターも、本作のスタイルに多大な影響を与えています」と本作のアーティストでもあるスコット氏は話します。

このように形作られた「おじいちゃんの記憶を巡る旅」の世界観は、優しさや険しさなど、自然の地形が見せる様々な表情を見事にとらえています。そして、その美しい風景はおじいちゃんの追憶の旅とリンクし、scntfc氏によるBGMと相まって、私たちを別世界に誘うのです。本作のアートスタイルについて、スコット氏はこう語ります:「アートの方向性を定めるのには苦労しました。まるでバカンスに行くかのように、プレイヤーがその中で時間を過ごしたくなるような世界を作りたかったのです。同時に、このゲームは自己内省、回顧、そして感情が大きなテーマとしてあり、それらの概念を支えるアートスタイルである必要がありました」

最後に、Bohatschさんからプレイヤーの皆さんへのメッセージをどうぞ。

「私たちはゲームを、人と人をつなげる手段として考えています。『おじいちゃんの記憶を巡る旅』は私たちにとってとても特別な作品で、世界中の人々が本作に触れてくれたのは本当に素晴らしいことです。日本のユーザーの皆さんも面白いと思ってくれることを願うとともに、時間をかけて遊んでくれたすべての方々に感謝しています」