MEET THE DEVELOPER
デベロッパと振り返る2017年
2017年に活躍したデベロッパの皆さんとのインタビューをお届けします。
第3回は「算数忍者」、「国語海賊」など、子ども向けの教育Appを手がけるFantamstickの代表取締役、ベルトン シェインさんです。
ベルトンさんと共に、彼の2017年を振り返り、ARや教育についても伺いました。
ベルトンさんから見て、2017年はどんな年でしたか?
「やっとスタートラインに立った」と感じた年でした。子ども向けのAppを4年ほど作ってきましたが、今年になって認知が上がって、受け入れてもらえるようになってきました。
その大きなきっかけはAR(拡張現実)ですね。iOS 11のARKitの発表があった時に、ARなら子どもが動きながら遊べるので、教育に新しい体験をもらたらすのではないかと思いました。ARKitが発表された瞬間に、これは「街」を作れるなと思い、それが「算数忍者AR」のアイデアにつながりました。
「算数忍者AR」についてお聞かせください。
ARで現実空間に忍者の街を映し出し、画面上の計算式の回答を持った村人をその中から探す、という教育Appです。
お子さんが抵抗感なく勉強できる方法を考え、ARを使って子どもたちに動き回ってほしいと思いました。どうやって動いてもらおうかと考えた時に、「探す」という行為が子どもたちの好奇心につながるのでは、と考えたんです。
そもそも「教育」というジャンルにフォーカスしたきっかけは?
初めてiPadが発売された頃、自分の子どもたちが幼稚園の年中と小学1年生でした。彼らにiPadで算数のAppを触らせたら、幼稚園では教わっていないはずの簡単な計算ができたんですよ。
なぜできたのか考えたら、鉛筆や紙が学習の障害になっていたような気がしました。それ以前は、そこまで直感的に学習できなかったので、教育的には革命だと思いました。ちょうど当時、ソーシャルゲームを作っている会社を辞めようと思っていた時でもあったので、完全に教育にシフトしてやっていこうと決めました。
お子さんたちにAppをテストしてもらうこともありますか?
そうですね。子どもの目線が大事なので、作ったらいったん、何も教えずに子どもたちに渡してみます。それを返してこなければ「やった!」。すぐに返してきたら、(熱中してくれなかったので)やり直し、という感じで開発しています。子どもたちも完全にチームの一員ですね。彼らから、こういうAppを作って、というリクエストがあったり、企画書まで書いてくれたり(笑)。
「算数忍者 AR」を遊んでみて、お子さんの反応はどうでしたか?
ARを見たことがなかったので、最初は世界観に驚いたみたいですが、「もっと動いてほしい」とか、「後ろに隠れていてほしい」とか、たくさん意見を言ってくれました。すべての意見を拾うことはできなかったですが、今後のアップデートに活かしたいですね。
Appを作っていて一番喜びを感じるところは?
ユーザーの方々からメールをたくさんいただくのですが、勉強が苦手なお子さんや、発達的に勉強が困難なお子さんが、「算数忍者」で九九を覚えました、というようなメールをもらうと「作ってよかったな」ってすごい感じますね。
では開発で苦労されたところは?
そこまでの苦労はなかったですね。逆にこれからかなぁと。
今、頭の中にはすごいアイデアがあるんですよ。それをどのように実現させるかを考えています。次に向けて、今のものを超える機能や驚きを、どうやって作るかを考えることに苦労しているかもしれません。
ベルトンさんとFantamstickが理想とする教育の形とは?
実は算数ができるはずなのに、入り口の段階で先生の言うことがわからないから可能性を発揮できていない子がいるのでは、と思っています。
FantamstickのAppは、その入り口として、楽しく簡単にすることを目指しています。算数って楽しいと感じてもらって、「僕、算数得意なんだ!」という気持ちで学校での学習を始めてほしい。将来的には、2年生だけど5年生の算数がやりたいと思ったら、自分でできるようなAppを作っていければと思ってます。もっと自発的にできるようになるのが理想ですね。
自分の子どもを通じていろいろな教育を見ていて、本当に人ってみんな違うんだな、と感じます。みんな違うのに、今の教育は全員を同じように扱ってるように感じていて。それぞれの子どもを個人として見るべきだと思っています。
例えば、うちの上の子は勉強が好きなので塾に行かせてあげました。反対に下の子はクリエイティブ派で、YouTubeに興味があったので、編集とアップロードまで教えたんです。決して上手ではないけど、今は自分ひとりで企画して、編集して、動画をアップロードしています。きっかけを与えて、あとは自分で考えて学んでもらう。そのように子どものモチベーションを引き出す教育の形をどんどん作っていけたらいいな、と思います。
今後の目標についてもお聞かせください。
「算数忍者」や「国語海賊」など、キャラクターを分けていろいろな科目をやっているのが現状です。個人的にはちょっと幅広くやりすぎている気もするので、科目ごとにより深みをもたせたいと思っています。先ほどお話ししたように、興味があれば上の学年の勉強もできるようなAppを作りたいと思ってます。
低学年向けには今のようにゲーム的な体験をメインにして、3~4年生ぐらいからは塾に行き始める年齢なので、ゲーム性やキャラクター性を抑えめにして。カリキュラムとかも考えていけたらいいですね。
モチベーションを引き出す教育の形をどんどん作っていけたらいいなと思います。
Fantamstick代表 ベルトン シェインさん
最後に、ユーザーの皆さんへのメッセージをお願いします。
お子さんが勉強に興味を持たないのは、必ずしも苦手だからではなく、きっかけがなかっただけの可能性があります。そのきっかけになるようなAppを作って、親御さんの助けになれたらと思います。
教育の入り口、間口を広げることで、子どもたちの可能性を引き出すという、Fantamstickの挑戦。ベルトンさんと、彼のチーム、お子さんたちが一丸となって作る、新しい教育の形から目が離せません。