どこか懐かしさを覚える写真。自分では説明できない、なぜか湧き上がってくる感情。

写真家・濱田英明さんの写真を初めて見た時、そのような気持ちにさせられました。彼の子どもたちを中心に、彼の写真に写るモデルは皆、自然体でのびのびとした表情を見せています。

今回、濱田さんと過ごした1日を元に、彼の写真に対する思いや、その場に彼がまるでいないかのような、モデルの自然体に隠された秘密を探っていきます。

「写真を真剣に撮りはじめたのは、実は子どもが生まれてからでした。親であれば誰でも子どもの写真を撮ると思いますが、僕もたくさん撮っていました。ちょうどその頃、インターネットで見つけた写真があって。それはすべてフィルムで撮られたもので、僕もそのような写真が撮りたいと思うようになりました」

そんな思いを胸に、子どもたちを撮り続ける中で、写真を見た多くの人から、「昔の自分を思い出す」という感想や意見があったそうです。

「写真に収めるものが、子どもがよくやるような普遍的なことだったので、見る人にとって『自分もやってたな』『自分の子どももやるな』というように『自分ごと化』してもらえたんじゃないかなと思います。そこから、それをもっと洗練させようと意識するようになりました」

彼が撮影するすべての写真には、誰もが経験した普遍的な瞬間と、モデルとの距離感があったのです。

「今回の撮影も、子どもたちの写真の撮り方と根本的には同じで、誰もが持っている記憶や経験を、どのようにすれば写真として表現できるか。その点について考えていました。今回も見てもらう人にとって、自分ごと化できるようなものだったら嬉しいです。それは、こうあってほしい、というような願望でもいいと思います」

濱田さんの写真は、淡く、そして温かな色味が特徴です。記憶や感情を呼び起こす、彼にとっての色とは、どういうもののでしょうか。

「リアリティのある色よりも、感情移入できるような色づくりを意識しています。もちろん現実を写しとっていますが、ファンタジーのような色調の方が、見る人の気持ちが入る余地が残るのではと思っています」

誰もが持っている記憶や経験を、どのようにすれば写真として表現できるか。そのことを常に考えています

濱田英明さん

もともと、ウェブデザイナーだった濱田さんは、当時、自分が写真家になるとは、思ってもいなかったと話します。

「インターネットを通じて、周りの人からポジティブなフィードバックをたくさんいただきました。そんな人たちの言葉や応援を通じて、趣味に過ぎなかった写真を仕事にしようと思えたし、今では天職だと感じています」

「『好きなこと』『向いていること』『できること』。仕事において、この3つが完璧にそろうことはとても難しいと思います。もしこの3つがそろって、かつ社会から求められるなら、すごくラッキーで幸せなことだと思っています」

「向いていることは、あまりに自然にできてしまうことなので、自分自身では気づきにくいのですが、それに気づいてくれる周りのポジティブな意見には耳を傾けるべきだと思います。謙虚でいるのも大事ですが、他の人に『すごいね』と言われたら、素直にその意見に耳を傾けるようにしてみてください。選択肢が広がるかもしれません」

好きなことを追求し、そして周りの声にも耳を傾けることで、天職に出会った濱田さん。そんな彼の写真に込められた瞬間と色が、見る者の記憶と感情を引き出していたのです。

では、その瞬間や色をどのように写真に表現しているのでしょうか。下のストーリーでは、「Halide」や「VSCO」などのAppを活用した、濱田さんの写真撮影や編集のテクニックを紹介しています。ぜひご覧ください。

このストーリーに登場した写真の
撮影と編集に使用したApp

濱田さんのような
どこか懐かしさのある写真を撮ろう