APPLE DESIGN AWARDS

スピードあふれる
光の宇宙へ

ネオンの宇宙を駆け抜ける、
甲虫マシンを操る、リズムゲーム。

Thumper: Pocket Edition

リズム・バイオレンス

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2019年のApple Design Awardsに輝いた「Thumper: Pocket Edition」は、強烈なスピード感と、まばゆい光の交錯が美しいリズムゲームです。この賞はAppleのプラットフォームにおいて、Appが目指すべきデザインやイノベーションの手本を示した、クリエイティブな芸術性と高度な技術力を併せ持つデベロッパへ贈られます。

メタリックなステージを駆け巡る圧倒的な疾走感。流れる光の中を進む甲虫の形をした金属製のマシンのことを、ゲームの生みの親たちは「スペース・ビートル」と呼んでいます。少し奇妙に聞こえるかもしれませんが、息つく間もない、緊迫のアクションを少しでも体験すれば、納得がいくはずです。

レーザーには注意しましょう。

ゲームは実にシンプルです。画面をタップして、美しいクロムのコースを疾走するスペース・ビートルを操作します。ジャンルはリズムゲームですが、ドラムを叩いたり、コードを鳴らしたりすることはありません。スペース・ビートルが壁をこすったり、跳ね返ったりすることで新たなサウンドが生み出されます。トンネルを猛スピードで走り抜け、コースに激突し、大きくカーブしながら前方へパルスを発するたびに、音の厚みが増していきます。ネオン調の演出、低音が響く電子音楽、そして滑らかに動くゲームプレイは、これまでにないゲーム体験を演出します。

スタジオで「Thumper: Pocket Edition」の開発に共同で取り組む、クリエイターのBrian GibsonさんとMarc Fluryさん。

音楽ゲームの名作「Rock Band」や「Guitar Hero」シリーズで知られる、「Thumper: Pocket Edition」の共同デザイナーであり、プログラマーとエンジンクリエイターでもあるMarc Fluryさんが、この独創的なリズムゲームの開発の舞台裏を話してくれました。

「このゲームは、開発に実に7年を費やしました。エンジンもツールもゲーム内の様々な素材も、すべて自分たちで作ったからです。とはいえ、開発中は毎年のように『あと1年で完成だ』と言い続けていました。1本のゲームを開発するのに、これほどの労力と時間がかかるのかと、驚きの連続でした。

ゲームの世界に直接オーディオを組み込んだら、没入感が高まるのではないかと考えました。そして、危険に満ちた景色の中を駆けていく『スペース・ビートル』という架空のマシンを作り出すことで、音楽とゲームプレイのビジュアルを一体化させることができました。このゲームの世界観を表現する言葉として、『リズム・バイオレンス』というのが合っているのではないかと思います」

美しいコースを走り抜けましょう。実際にプレイすると、思わず夢中になる心地よい難易度のゲームです。

「当初はステージの設計と音楽とで、別々のエディタを使って設計していました。様々な技術を使って、その2つを組み合わせていたのです。ですが、そのうちに、ステージとオーディオを一緒に作成できる、統合されたツールを作れることがわかりました。その瞬間、『これですべてが変わるぞ』と思いました。

ターンや旋回は左右へのスワイプで行いますが、ゲーム中には左右どちらのレーンを走るを選ぶ場面も出てきます。両方とも、左右のどちらかを選ぶ操作ですが、それらを単純な親指の動きだけで、操作し分ける方法を見つけることが、開発における最大の課題でした」

ステージとボスの初期のスケッチ。

「最終的には、親指でのスワイプはターンや旋回だけに使い、レーンの切り替えにはジャイロセンサーを用いることで落ち着きました。ゲーム中はずっと片手だけでプレイできます。もちろん、実際に指で触って操作したいというプレイヤーのために、デバイスを傾ける必要のない、両手操作でレーンを切り替えられるオプションも加えてあります」

「Thumper: Pocket Edition」のメタリックな雰囲気を生み出すために、チームが使用した機器の一部。

「『Thumper: Pocket Edition』のような一風変わった異世界の体験を作り出せたこと、そして、それが多くの人の心に響いたことをうれしく思います。実は、こんなに奇妙でマニアックなゲームは、ほとんどのプレイヤーには相手にされないのではないかと心配していたのです。それがここまでたくさんの支持を得られたことは、私たちにとって、とてもうれしい驚きです」