舞台裏

マンガの未来形テクノロジーの創造力

オリジナルマンガ「終わらない夜に」を描いた加藤オズワルドさんの創作インタビュー。

新しい表現はいつも、まだ当たり前でないことに挑戦する勇気と豊かな才能を持ったクリエイターから生まれます。

App Storeだけで読める多田由美さんの「いつもとは違う日」と同じく、App Store初のオリジナルマンガ「終わらない夜に」を描いた加藤オズワルドさんは、フリーランスで活躍しているクリエイターです。マンガだけでなく、アニメーション、ゲームなどのコンセプトアートを描いています。

「終わらない夜に」では絵の中に「フキダシ」を入れず、マンガとアニメーションを組み合わせて、アイデアと創造を巡るファンタジーを創り出しました。

縦スクロールの演出

今回、加藤さんには縦スクロールのマンガの創作に初めて挑戦してもらいました。

「縦スクロールでの演出表現は、まだ各作家が模索している状態だと思います。横開きの紙の本向けに使ってきたマンガの手法を持ち込んでいる人が多いです。従来の演出を持ち込むのではなく、縦スクロールだからこそのおもしろい表現ができたらと思いました」

キャラクターの感情を演出するために、コマの配置を工夫したシーンがあります。主人公のロカが幼なじみのスーとの約束を果たせずにいることを気にしているところです。

スーとの約束を果たせずにいるロカ。少し離れた二人の心の距離をコマの配置で演出している。

「コマを分けて、間に物理的な距離を作ることで、心の距離感を出してみました。縦スクロールで見た時に、単純に横に並べるよりも、主人公の感情の表現がうまくいった気がします」

時間経過をアニメーションで

マンガの中にアニメーションを入れることで、時間経過と感情を演出しています。

「マンガは読む側のペースで時間が流れますが、アニメーションは作り手側のペースで時間が流れます。その2つを組み合わせてみて、複雑な表現まではできていないですが、作り手と読み手の間での主導権の渡し合いのようなものが作れたんじゃないかと感じています」

Procreateの面白い筆

今回のマンガは全編「Procreate」で制作されました。「Procreate」を使った感想を加藤さんはこう語ります。

「面白い筆がそろっているなと思いました。デジタルの良いところを活かした表現の面白さに特化したものがそろっています。使っているうちに、欲が出てきて、もっと試してみたい、と思いながら使いました」

デジタル作画ツールは
代用品ではなく別物

「『Procreate』は、デジタルで描くことに特化してデザインされていて、紙での印刷を前提にした発想で作られていないというか、デジタルのままで完結できるように設計されている感じがしました。単純に絵を描くツールとして使いやすいなと感じました」

「デジタルのツールは、少し前まで、現実にすでにある何かを再現することに必死になっていたような気がします。例えば油絵の筆のタッチをいかに再現するか、などです。だけどデジタルツールは現実の何かの代用品というよりも、別物だと思うのです」

新しいツールで遊ぶ

加藤さんは、ブラジルのサンパウロで15歳まで暮らしました。絵は独学で学びました。東京に移り、東京工芸大学映像学科へ進学しました。当時は、コンピュータを使った映像制作が本格的に始まった頃で、3DCGや様々なデジタルツールを使った映像制作を学びました。フィルムでの映像制作から、デジタルでの映像制作や編集まで、新しいツールを学び続け、創作してきました。

「新しいツールを使ってみるのは好きですね。デジタルで描く強みは、画像や映像を実際にお客さんが目にするのと同じ状態で、そのものを画面上で見ながら作れるのが大きいと思います。また、フィルムやビデオにするための機材や費用がかからないので、何度も試せます。作る環境が変わることで、人の成長の仕方も変わってきているのかな、と思います」

創作をもっと自由にする

テクノロジーはクリエイターの創作に、どのような貢献ができるのか、その問いに加藤さんはこう答えます。

「フリーランスで活動していて、難しいなと感じるのは、大きなプロジェクトをやる時ですね。けれど、テクノロジーの進化で、人もお金も集めやすくなったと思います。デジタルは0と1で作られた世界なので、それが普遍的な分、言葉の違いも越えやすいように感じます。設備投資に必要なコストも相当下がっていて、以前のように、機材のある場所、企業や研究機関に属していないと機材が使えない、創作できない、という状況ではなくなってきました」

デジタルならでは
のものを作りたい

「僕の描いた絵の中を、プレイヤーが散歩するような、インタラクティブな、参加できるアートのようなゲームを作りたいなと思っています。『Procreate』のように、新しいことに挑戦しがいのあるツールを使えば、思ってもみなかったことができるかもと感じています」

「現実の焼き直しではなくて、デジタルならではで、できることがもっとあるはず。作ったものをインターネット上に投げて、誰かが気づくと、一気に広がっていく。そういう広がり方の変化も、テクノロジーが人間にもたらすものとしては重大な気がします」

物語を描くためのApp

コードの世界に触れる

オリジナルマンガ「終わらない夜に」

多田由美さんが描く
オリジナルマンガ「いつもとは違う日」

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