MEET THE DEVELOPER

機械学習を駆使するフランスのデベロッパ

自動で画像を検出してくれる写真編集Appの誕生秘話。

Photoroom 画像や写真の被写体をAIが自動で切り抜き

背景を透過・透明化して消すことができる画像編集・加工アプリ

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世界中で日々たくさんの素晴らしいAppが作られています。それらが生まれ、世に広がるために、Appを開発するデベロッパたちをサポートする取り組みも、様々な場所で行われています。

フランスのパリに2017年に作られたStation Fは、世界でも最大級のスタートアップ・キャンパスです。約1,000社が集い、スタートアップを支えるエコシステムが生まれています。Appleもデベロッパをサポートする教育プログラムを提供しています。

約100年前に建てられた、古い貨物列車の廃駅をリノベーションして作られたStation Fの建物。ここに人々が集い、新しいつながりと創造が生まれています。

Station Fのように様々な人が集い、交流する場が作られると、そこから新しい発想を形にするきっかけが無数に生まれます。フランスではデジタル分野の勢いが増し、面白いAppを作るデベロッパが育っています。写真編集Appの「PhotoRoom」もそんなフランスのデベロッパが開発しました。

フランスのデベロッパが開発した洗練されたデザインの写真編集App「PhotoRoom」。

2人が2週間で開発した
機械学習を使ったApp

「PhotoRoom」は、洗練されたデザインの写真編集Appです。機械学習機能を使って、画像の中の人物や物を自動でトリミングしてくれます。Matthieu RouifとEliot Andresの2人が、わずか2週間で開発しました。

「前の仕事を辞めた後、オンラインで機械学習を学んでいた頃にEliotと出会い、2人で『PhotoRoom』の最初のバージョンを開発しました。今から振り返れば、それはまだ荒削りなものでしたが、すでにCore MLを使って、自動で画像の背景を切り取る『PhotoRoom』の核になる要素は実装していました」

Appを作ろうと思ったのは、仕事で大量の画像を編集し、その背景を切り取らなければいけなかったことがきっかけでした。

「私は編集ツールを使いこなせるほど得意ではなかったので、画像の背景を切り取るのにとても時間がかかりました。単純作業に多くの時間が取られるのは、もったいないと感じました。ですが当時すでにあった背景を切り取るためのAppは、すべてが手作業で背景を取り除くものだったのです」

手作業ではなく、機械学習の機能を使って、Appが自動で背景を切り取れたら。そこから「PhotoRoom」が誕生します。機械学習に着目した理由をRouifさんはこう語ります。

「PhotoRoom」では、 機械学習の機能を使って、Appが自動で背景を切り取ります。

「機械学習を使った『PhotoRoom』を使えば、ユーザーは画像にかけるマスクやレイヤーなどの概念を理解し、技術を習得し、編集作業するのに何万時間も割く必要はありません。また、機械学習の世界は、半年ごとに新しいアルゴリズムが席巻します。すでにあるAppに後から機械学習の機能を入れるよりも、新しく作った方が、ユーザーと既存のAppとの関係性を再構築する必要がないので、良いと思いました。そこには新しいAppこそが切り開ける大きなチャンスがあると思ったのです」

スタンフォードで学んだ
パリのApp開発者

Rouifさんはスタンフォード大学院で物理学の修士にいた時に、iOSのApp開発の授業を受講しました。その後、2014年に動画編集Appの「Replay」を開発するスタートアップに参加しました。

「PhotoRoom」を開発した、Matthieu Rouifさん。

「開発チームはパリでも本当に優秀なチームで、『Replay』はAppleからiPhoneのAppとして、Best of 2014の一つに選ばれたこともあります。その2年後、GoProがReplayを買収したため、私たちは『Replay』を『Quik』という名前に改称しました」

GoProで画像編集製品を統括した後、Rouifさんは会社を辞めて、新たに「PhotoRoom」を開発しました。

PhotoRoomという名前の理由

開発当初は背景を意味する「Background」という名前を考えていたそうです。

「ですが、単に背景を切り取る以上に、もっと広い視野での機能や体験を考えていると気付きました。そこで世界中のユーザーに尋ねながら、名前を考えました。私たちは英語が母語でない人でも、簡単にスペルが覚えられて、発音しやすいものにしたかったのです」

開発当初から、世界中のユーザーを念頭に置いているのも「PhotoRoom」の特徴です。Station FのAppleの教育プログラムに参加し、またApp自体も多言語展開させて、開発の最初期から多様なフィードバックを受けられる環境を意識的に作ってきました。

世界中のユーザーが
使い方を作る

実際に、幅広い層の人々が「PhotoRoom」を使って気軽に自分の創造性を広げています。

「自分や家族の新しいプロフィール写真を作る人や、ソーシャルネットワーク上のサッカーチームのページで使う写真を作る人もいます。デザインのプロフェッショナルたちが使ってくれているのを知った時はうれしかったです。ニューヨークのとあるファッションデザイナーは、服のデッサンを合成するのに使ってくれています」

作りながら改良していく

まずは作って世に出す。そして作りながら改良する方針で、「PhotoRoom」は成長してきました。今後もアルゴリズムを改良し、画像制作のためのテンプレートを増やして、さらに、アニメーションと動画作成の機能も拡充させたいと言います。

機械学習の世界は、半年ごとに新しいアルゴリズムが席巻します

Matthieu Rouifさん

その進化のスピードに乗り、さらにAppを改良していく彼らの開発の加速度は、世界中のユーザーからのフィードバックを得ることで、さらに増していきます。Rouifさんは、服の販売サイトに携わる人からの感想に、驚かされたことがあると言います。販売サイトには、大量の商品写真を掲載しなければなりません。

「その人は、『このAppがどれだけ人生を救ってくれたか伝えきれない』と言ってくれました」

クリエイティブな活動の中の単純作業を減らすことで、人々はよりその人の創造性や思考が求められる部分に時間を使えるようになります。技術と実力を持った2人が出会い、短期間で開発したAppは、人々の発想と表現の間にある時間をも縮めてくれます。