インスピレーション

テクノロジーオタクが世界を救う

miHoYoのCEO、Liu Weiさんが語る「原神」開発秘話。

原神

HoYoverseが贈るオープンワールドRPG

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1995年10月、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」が日本で放送されました。

14歳の少年を主人公とする、ロボットや聖書をモチーフにしたこのシリーズは世界中を驚かせました。アニメやマンガ、ゲームの世界に革命を起こし、放送以来、多くのファンに影響を与えています。

ゲームデベロッパ、miHoYoのCEOであるLiu Weiさんと、上海交通大学コンピュータ科学専攻でLiuさんのクラスメートだったCai Haoyuさん、Luo Yuhaoさんも、そんなファンの一人でした。「新世紀エヴァンゲリオン」を始めとする、アニメ、マンガ、ゲームへの愛が、この3人を結びつけたのです。

2011年、Liuさんたちは初めてのゲーム作品となる「FlyMe2theMoon」をリリースしました。「新世紀エヴァンゲリオン」へ捧げたこのゲームでは、タイトルの通り、月の女神にちなんで名付けられた、白髪の少女キアナが月へと旅立ちます。

キアナは私たちが初めて作ったゲームのキャラクターで、まるで我が子のように大切な存在です

Liu Weiさん

「FlyMe2theMoon」が評判となり投資家たちの注目を集めた彼らは、2012年にわずか6人でmiHoYoを創設しました。会社のロゴには「Tech Otakus Save the World(テクノロジーオタクが世界を救う)」と記されています。

そこには、テクノロジーが未来を作るという強い信念と、“オタク”としての飽くなき情熱が込められています。miHoYoのテクノロジーオタクたちはアニメ愛にあふれるゲームと、テクノロジーへの探究心を武器に、ゲームの世界に飛び込みました。

2012年と2014年には、miHoYoは2D横スクロールアクションゲーム「Zombiegal Kawaii」と「崩壊学園」をそれぞれリリースし、サブカルチャーを愛する多くのファンを獲得しました。LiuさんはCEOだけでなく、研究開発や顧客サービス部門の責任者も兼任しています。ソーシャルネットワーク上でプレイヤーの質問に気さくに答えている姿から、Brother Weiの愛称で呼ばれ、なんと顔に「Wei」と描かれたキャラクターとしてゲームへの出演も果たしています。

キアナは「Zombiegal Kawaii」と「崩壊学園」の両作で再び主役を演じました。そして2016年、キアナとmiHoYoは 「崩壊3rd」を発表し、より大きな舞台へと足を踏み入れます。

3Dアクションゲーム「崩壊3rd」は、磨き上げられた技術により、ゲーム業界の人々のみならず、プレイヤーたちも驚かせました。とはいえ、その道のりはとても険しいものでした。Liuさんたちは3Dモデリングやアニメーションレンダリングの技術をネットで調べて学びながら、一からゲームを作り上げたのです。ゲームの最初のコードが書かれたのは、朝から晩まで何日も苦しみ抜いた後のことでした。

革新的なテクノロジーがエンターテインメントを進化させると、ずっと信じていました

Liu Weiさん

「崩壊3rd」の大ヒットによって、miHoYoも大きく成長を遂げました。「崩壊3rd」リリース後の4年間で、6人で始まったチームは1,000人以上の規模になり、圧倒的な技術力を身につけていました。

元気あふれる若きスターだったキアナもまた、大きな責務を背負ったヒロインへと成長を遂げました。短編アニメーションの「Meteoric Salvation」で、キアナは再び月へと向かいます。しかし、それは夢の旅行ではなく、爆弾を月へと飛ばして、街を救うためでした。

そして、miHoYoの新作「原神」が正式にリリースされました。400人以上のオタクたちが3年の歳月をかけて命を吹き込んだこのゲームは、どこまでも自由で野心に満ちた、今までのゲームに挑戦するオープンワールドアドベンチャーです。

そこで今回はBrother Weiさんに、プレイヤーとの絆や「原神」の開発秘話、「崩壊」シリーズの今後、そしてファンへの思いなどを聞きました。

Weiさんが、“Brother Wei”としてゲームに登場するようになったのはなぜですか。

miHoYoを立ち上げて最初の数年間はチームも少人数で、ちゃんとしたマーケティングもできませんでした。そのためプレイヤーのみなさんと交流することが、一番の宣伝方法だったのです。また、「Zombiegal Kawaii」では、私がカスタマーサービスの代表だったので、ファンのみなさんと直接交流をしているうちに、“Brother Wei”と呼ばれるようになりました。

プレイヤーを大切にする気持ちは、昔も今もまったく変わっていません

Liu Weiさん

その後、コミュニティイベントを開いた時、多くの人たちにBrother Weiのアイコンを作るべきだと言われました。そこで一番人気だったのが、誰が見てもわかりやすい、のっぺらぼうの顔に「Wei」とだけ書かれた坊主のキャラでした。それでこのアイコンに決定し、ゲームにも登場させることにしました。

このアイコンには、miHoYoのゲームに対するファンのサポートや愛情が詰まっています。私自身への愛も感じるほどで、本当にありがたいことだと思います。miHoYoは昔からファンを大切にする会社でしたが、それはこれからも変わりません。

Brother Weiは「原神」に登場しますか。

「原神」には丘々人という敵が登場しますが、その顔に「Wei」と書いた特別バージョンを作ってあります。

丘々人となったBrother Weiは、今後のバージョンでテイワットの地に現れるかもしれません。私がどうして丘々人になるのかは、動画共有サイトbilibiliで活躍するトップコンテンツクリエイターたちと共同で制作中の短編ビデオの公開をお待ちください。

「原神」の開発中に印象的な出来事はありましたか。

ゲームの開発中、重圧に押しつぶされそうな時期がありました。その時にあるプレイヤーのコメントを読んで、とても感動しました。あの時のことを考えると、今でも胸が一杯になってしまいます。

それはこういうコメントでした。「『崩壊3rd』は私が一番遊んだゲームではありませんが、間違いなく、一番思い入れのあるゲームです。miHoYoは今『原神』を開発しているところですが、『崩壊3rd』に登場する無量塔姫子ならきっと、『顔を上げて、進み続けなさい!』と言うでしょう。今はまだ未完成かもしれませんが、ファンの期待に応えたゲームになることを信じています」

ファンは私たちを信じていました。今日のmiHoYoがあるのは、ファンの支えがあったからこそです。このコメントを読んで、最高のゲームを作らなくては、とより一層元気付けられました。

「原神」の舞台は広大なオープンワールドですが、プレイヤーに行ってみてほしい場所はありますか。

中国をイメージした港町の璃月にはぜひとも訪れてほしいです。ゲーム内の7つの都市のうちの1つは、中国の文化や建築を反映したものにしたいと初めから決めていました。ヨーロッパ的な街並みが特徴のモンドに比べて、璃月という地域のデザインは本当に苦労しました。

璃月には、蘇州にあるような松や竹の庭、恵州の運河の雰囲気や建築物、黄龍の絶景に、中国の歴史ドラマでおなじみ葦の沼地など、現実世界の要素を盛り込んでいます。その結果、大自然の美しさを感じられる、ドラマチックな地域になったと思います。璃月の町の景観や建物は、張家界や桂林、黄龍で実際に見られる壮大な風景をもとに作り上げました。

「原神」はiPhoneやiPadで驚異的なグラフィックを実現しましたが、その秘密はなんでしょうか。

Appleのデベロッパ担当チームとはゲームの開発中ずっと、密に連絡を取り合ってきました。Apple独自のグラフィックスAPI「Metal 2」が使えたのも、素晴らしいグラフィックを実現する上で大いに助けられました。iPhoneとiPadは強力なハードウェアであるばかりか、理想的なソフトウェアとの統合も実現しています。これらのデバイス上での「原神」のパフォーマンスには、とても満足しています。

「原神」の冒頭でキアナにそっくりのキャラクターが登場したことがプレイヤーの間で話題になっています。本作とキアナには何らかの繋がりがあるのでしょうか?

キアナのことをずっと気にかけ、愛してくれているみなさんには感謝の気持ちしかありません。「原神」には多くの謎が隠されています。その真相については、今後のストーリー展開にご注目ください、とだけ言っておきましょう。

今後登場するテイワットの町のヒントが、ゲームのストーリーや会話の中に散りばめられています。新しいエリアに向かえるようになるまで、続報を楽しみにお待ちください

Liu Weiさん

「崩壊」シリーズの今後の展開はどうなりますか。

2020年7月の初めに「Lament of the Fallen」という短編アニメを公開しましたが、その時点では物語の完結へ向けて、約半分を過ぎたあたりです。「崩壊3rd」の地球でのストーリーを語り尽くすには、あと3年はかかるでしょう。

そのあとで「崩壊」シリーズの新章をお披露目したいと考えています。そのストーリーは、未来のキャラクターたちが惑星から惑星へと渡り歩き、多くの奇妙なエイリアンたちと出会うものになりそうです。

「原神」がリリースされた今、プレイヤーに向けて伝えたいことはありますか。

「原神」の開発というこの長旅を、miHoYoと一緒に歩んできてくださったプレイヤーのみなさんにはあらためて、心からお礼を申し上げます。

「原神」がこうして正式なリリースを迎えられたのも、ファンのみなさんの支えがあったからです。本当に感謝しています。そしてテイワットの世界で、みなさんにお目にかかれる時を楽しみにしています。もちろん、今後も「原神」をみなさんが待ち望んだようなゲームにすべく、全力でクオリティを磨き上げていきます。