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ゲームへの愛が生む進化した世界

「オクトパストラベラー 大陸の覇者」の新たな表現で描かれる冒険とは。

オクトパストラベラー 大陸の覇者

シングルプレイRPG

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ドットの集合で描かれ、デフォルメされた見た目が特徴的なピクセルアートは、かつてのコンシューマゲームで隆盛を極め、今でも様々なゲームで使われるビジュアルの表現方法です。「オクトパストラベラー」シリーズは、この表現方法を、過去の名作への愛情と現代のテクノロジーで進化させました。

「オクトパストラベラー 大陸の覇者」は、コンソール用のゲームとして作られた前作「オクトパストラベラー」の数年前を舞台として、新しい物語を描くゲームです。ピクセルアートと3DCGを合わせたHD-2Dという独自のビジュアル表現で描かれる世界には、複数の登場人物の視点で描かれる”欲望”をテーマにした重厚な物語と、8人の仲間を編成して戦う戦略的なバトル、そして自由に大陸を旅する、冒険の日々が詰まっています。

スーパーファミコンの頃のロールプレイングゲームが大好きで育ってきたので、当時の記憶とずっと戦い続けているという気持ちがあります

– Tomoya Asano

そう語るのは、前作「オクトパストラベラー」の企画・プロデュースを担当し、シリーズの生みの親であり、「オクトパストラベラー 大陸の覇者」の監修も務めた浅野智也さんです。

「ロールプレイングゲームを作り続けていますが、どうしてもあの頃の方がよかったのではないかと壁を感じてきました。ただ本シリーズでは、その記憶と戦うのではなく、武器にするというか、寄り添おうという思いで開発しました。その時の記憶、気持ちを素直に今表現してみたらどうなるのだろうかという思いから、本シリーズは始まっています」

地に足の着いた世界観

「オクトパストラベラー 大陸の覇者」を始めるとまず、富、権力、名声の3つのテーマから、遊びたい物語を選んで冒険を始めます。それぞれの物語には選んだ欲望を極める覇者(ボス)が存在し、そのテーマを取り巻く戦いに、プレイヤーは身を投じていくことになります。本作のプロデューサーである横山祐樹さんは、人の欲望を本作のテーマに選んだ理由をこう語ります。

「本シリーズのコンセプトに、『地に足の着いた世界観』というものがあります。大人の方にも申し分なく楽しんでもらえるように、普遍的な人間ドラマを題材に、それを掘り下げていきました」

地に足の着いた、大人でも楽しめる物語。本作の3つのメインストーリーを司る3人のボスは、邪悪な魔法で世界征服を目論むようなものたちではありません。動機と目的に納得感すら覚える、プレイヤーの心情にもどこかリンクしたキャラクター作りが目指されたそうです。

“ちょうどいい自由度”の冒険

3つのメインストーリーは、ゲームを進めれば後からそのすべてを遊べます。本作では、3つの物語と、それ以外に用意されたサイドストーリーなどを、自由な順番で遊べるようになっています。

8人編成で挑む、戦略的なバトルが楽しめます。

「町に着き、イベントが発生して、ダンジョンがあって、ボスが待ち受けるという、ロールプレイングゲームを楽しむ上でのわかりやすい構造をとった、ゲームらしいゲームとして作りました。そしてその冒険を、好きな主人公で、好きな物語やイベントから始めていいんです。かつてのロールプレイングゲームを遊んだ自分のような世代でも楽しめる、"ちょうどいい自由度”を目指しました」と浅野さんは語ります。

本作には、多くの自由な要素がありながら、世界観に没入して物語を深く体験していくロールプレイングゲームの醍醐味がしっかりと落とし込まれています。自由と制約の絶妙なバランスで、昔からのゲームファンにも、新しくゲームを遊ぶ人にも、新鮮なロールプレイング体験が用意されています。

フィールドコマンドで、町の人々と交流できます。

この”ちょうどいい自由度”を体現しているのが、フィールドコマンドです。プレイヤーはフィールドコマンドを使うことで、町にいる大量のキャラクターたちに様々なアクションを行うことができます。買い取ったり、ねだったりしてアイテムを入手したり、戦いを仕掛けて勝利することで仲間に引き入れたりすることもできます。交渉が失敗するとその町との関係性が悪くなり、5回失敗するとフィールドコマンドを使用できなくなります。すべてに話しかける必要はありませんが、フィールドコマンドの存在で、本作の遊びの幅は広がっています。キャラクターのプロフィールや背景も知れるので、世界をより深く理解する助けにもなるでしょう。

「フィールドコマンドは、本作のゲームらしい要素だと思います。町の人に話しかけることで、ちょっといいアイテムが手に入るなど、攻略の自由度を広げています」と横山さん。

気づいたら町中のキャラクターたちに話しかけてしまっていた、ということが起きてしまうのが本作らしい体験です。

HD-2Dだから描けたゲーム体験

本作を語る上で外せないのが、HD-2Dのビジュアルです。ピクセルアートの上に、奥行きのある3DCGの画面効果を組み合わせた表現です。浅野さんは、HD-2Dを開発した背景をこのように振り返ります。

「初めは3Dの要素はなく、見下ろし型のスーパーファミコンのゲームに近い見た目でした。ただ、それだと現代のゲームとしては物足りなさがあり、視点の位置を落として奥行きを加えてみると、徐々に見たこともない世界が出来上がっていきました」

本作を立ち上げたら、3DCGで描かれた空や海を見てみてください。その美しい世界の中で、ピクセルアートのキャラクターたちがかわいらしく暮らす姿が見られるのは、本作ならではの体験です。

ビジュアル表現にピクセルアートを採用した理由について、両者はこのように語ります。

「フィールドコマンドなどのゲーム的な遊びの表現は、リアルすぎないほうがいいと考えています。ゲーム的な表現をするには、適度に抽象化されていることがポイントだと思います」と横山さん。

「フィールドコマンドで町の人にいきなり戦いを仕掛けるなど、とてもゲームらしい本作にとって、写実的な表現では耐えられない部分があります。それが、デフォルメされた表現だと、飲み込みやすく、楽しみやすいのだと思います」と浅野さん。

さらに、浅野さんはこのように続けます。

「『ファイナルファンタジーVI』が、開発における一つの目標としてありました。遊んでいた当時の記憶は美化されるものだと考えています。今それを引っ張り出してきて遊ぶと、懐かしくてうれしいかもしれませんが、当時夢中になって遊んだ時の感覚とは別物だと思うのです。当時、自分も含めてプレイヤーたちは、ブラウン管で見ていた画面以上のものをイメージで脳内補完して楽しんでいたと思います。そんな当時のプレイヤーの脳内補完も含めたゲーム体験を作りたかったのです」

ゲームと共に育ち、ゲームを愛してきたチームだからこそ作ることができた「オクトパストラベラー 大陸の覇者」。本作は、ロールプレイングゲームの過去の名作たちの素晴らしい体験を丁寧に受け継ぎながら、それを現代でも遊べる体験へと徹底的に昇華させています。自分らしく遊べる自由度の中で繰り広げられる、揺るぎないロールプレイング体験を、iPhoneやiPadでお楽しみください。