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土が教えてくれるちきゅうのひみつ
SOIL / かこさとし作 -地球 その中をさぐろう- より
自然科学アプリ
どうしてアサガオの芽(め)が
でないのだろう?
小さなプランターの前で、ユウくんは一人、むずかしいかおをしています。
アサガオの種(たね)を土にうえて、まいにち水をあげてまっていると、やがて種(たね)がねむりからさめて、むくむく土をおしのけて、芽(め)がでて、花がさくよ、とセンセイはいっていました。
だけどどうやらユウくんのアサガオの種(たね)はずーっとねむったままのようなのです。
これでは、なつやすみの宿題(しゅくだい)ができません。黒い土は音も立てず、しずかなだけで、ユウくんのアサガオは花どころか芽(め)がでる気配(けはい)もありません。
ユウくんはつちをほりかえして、なかをみて、アサガオがちゃんと根っこをのばしているのか、たしかめたいとおもいました。けれど、そんなことをしたら、アサガオの根っこをキズつけてしまいます。
うちの土はダメな土なんじゃない? ユウくんがそうつぶやくと、お母さんがいいました。
「土の中をみてみようか」
ユウくんはお母さんと、「SOIL(ソイル)」という土のなかの様子(ようす)をしることができるアプリケーションをのぞいてみました。
土の中には
なにがあるのだろう
「SOIL(ソイル)」の中の「春の野原(ハルノノハラ)」の土の上に、カントウタンポポがさいています。ゆびで画面(がめん)の右下にあるムシメガネを1回さわると、スコップのマークにかわります。
ユウくんが土の上をトントン、とたたくと、土がくずれて、土の中の様子(ようす)がをみられるようになりました。トントン、トントンとたたくたびに、土がけずれていって、とてもたのしいです。
土の中から、虫があらわれて、そしてタンポポの下の土からは、下にむかってまっすぐにのびた白いタンポポのネがでてきました。ネはながく、ながく、下だけでなく、ヨコにもナナメにものびています。
タンポポもアサガオも、きれいなハナをさかせるためには、土の中で同じくらいの長さになるくらい、ネを大きく成長(せいちょう)させないといけないのです。
窓の外では、太陽のまぶしいひかりが、たくさんの緑(みどり)をてらしています。ユウくんはお母さんと、ホンモノの土を見にいくことにしました。
草や石のかげで
かくれんぼするものたち
山につづいていく道を歩いていきます。そこには、「SOIL(ソイル)」の中の「初夏の農村(ショカノノウソン)」で見たのと同じように、畑や小さな水田があります。
あたりには、たくさんの木が立ちならび、葉(は)っぱがおいしげり、緑(みどり)のじゅうたんのようです。けれどひとたび、草をかきわければ、そこには一面(いちめん)、土が広がっているのです。
ユウくんは土にさわってみました。すこしあたたかいです。太陽がちょくせつあたっているところは、ほかのところの土よりもさらにあたたかくてさらっとしています。その下にあるしめった水分をふくんだ土まで、しっかり根(ね)をのばして、大きな木が立っています。
木の表面(ひょうめん)はかたそうに見えましたが、みどり色のコケがついていて、やわらかくてしっとりとしています。その上を歩いていた小さなナナホシテントウムシが、ユウくんの手にのぼってきました。
土の中の
たからもの
木や草の上をよく見てみると、そこにはたくさんの虫たちがいて、生きるための営み(いとなみ)をしています。「SOIL」で土をほったときと同じように、土の中や石のうらに、ユウくんはたくさんの虫を見つけました。オカダンゴムシは、さわると体をくるっとまるめてボールみたいになります。
草のはえたしめった土の下では、ヒトツモンミミズをみつけました。ヒトツモンミミズは土の中で空気の通り道をつくったり、土の養分(ようぶん)をかきまぜたりもします。オカダンゴムシは、落ち葉(おちば)やかれた植物(しょくぶつ)をエサにして、それらを分解(ぶんかい)してよい土をつくる手助け(てだすけ)をしているといいます。
土のなかには、生きものの秘密(ひみつ)がたくさんつまっているのです。
たくさんのいきものが
くらしている地球(ちきゅう)
ユウくんの体よりも大きなヤマユリがさいています。
まっ白な花に顔を近づけると、どこか甘いような、けれどちょっとかおをしかめたくなるほど、強いにおいがしました。
「SOIL」には、ヤマユリは6枚の花びらをつけ、球根(きゅうこん)のユリネは食べられるとかいてあります。ユウくんは他の草のにおいもかいでみました。べつの草は、ヤマユリとはべつのにおいがします。草のにおいの中に、土のにおいもまじっているのに、ユウくんはきづきました。
セミのなきごえがきこえます。前からもうしろからも、上からも下からも聞こえてきて、どうやらユウくんのまわりにはたくさんのセミがいるようです。セミだけではありません、かぞえきれないほどの生き物(いきもの)に、ユウくんはかこまれています。
土の上にも、土の中にも、たくさんの生き物がいます。たべたり、のんだり、成長(せいちょう)したり、枯れたり(かれたり)、分解(ぶんかい)したりしながら、そうやってみんなでいっしょにいきているのです。
目には見えないけれど、土の中で根はしずかにのびているように、目に見えなくても、一つの地球(ちきゅう)の上で、みんなの生きることはつながっています。
ユウくんは世界(せかい)の秘密(ひみつ)を一つ、発見(はっけん)しました。
SOILとかこさとしさんについて
「SOIL」はかこさとしさんの「地球」(福音館書店 1975年刊)という科学絵本をもとに、かきぬまつとむさんがつくったAppです。かこさんは「物事の表面に出ているものの真の実体は、かくれた内部に起因している」と考えて、「地球」の地表の下もわかるように絵本を描きました。「SOIL」は地球に住む様々な生物について教えてくれます。見えないところでたゆまなく繰り広げられる生き物の営みを教えてくれます。
おもしろいというのは、一冊の本をよみ通し、よく理解してゆく原動力になるだけでなく、もっとよく調べたり、もっと違うものをよんだりするというように、積極的な行動にかりたてるもっとも大事なエネルギーとなるものです
絵本作家・工学博士、かこさとしさん「地球」解説より