MEET THE DEVELOPER

未来へつなぐ家族の絆

生みの親・笠原健治氏が語る「家族アルバム みてね」の誕生と成長の軌跡。

家族アルバム みてね

子供の写真や動画を共有、整理アプリ

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大学在学中に起業。ソーシャルネットワーキングサービス「mixi(ミクシィ)」などを立ち上げ、現在も株式会社ミクシィ取締役ファウンダーとして最前線で事業を率いる笠原健治さんが、今、心血を注いで開発しているアプリがあります。

それが、家族向けの写真・動画共有アプリ「家族アルバム みてね」です。祖父母や親族など招待した人だけに、手軽に思い出を共有できるとあって、子育て層を中心に支持を獲得し、150か国以上で提供されるまでに成長しています。

果たして「みてね」はどのように誕生し、育ってきたのか。また、「みてね」を通じて実現したい未来像などについて、ご本人に伺いました。

子どものすべてを
記録し、共有したい

「みてね」誕生の萌芽は、笠原さんに第1子が生まれた2013年にさかのぼります。

「子どもの誕生をきっかけに、『これほど写真や動画を撮るのか』と驚きました。その一挙手一投足をすべて記録したい。妻が撮る写真、動画も見たい。それを自分の親にも共有したい——。けれども、当時、写真や動画をスムーズに共有・保存できるサービスはありませんでした。それなら自分たちで立ち上げようと社内で話したところ、その想いに何人かが共感してくれて。世の中的にもニーズがあるのか調査しながら、開発していきました」

子どもの誕生を機に写真や動画が急増し、その保存・整理に頭を悩ませた経験は多くの親に共通するものでしょう。そんな普遍的なニーズと、何より愛娘のすべてを記録しておきたいという笠原さん個人の想いを養分として、「みてね」は2015年4月に産声を上げました。当時、開発で重要視したことを以下のように語ります。

「操作面でのちょっとしたストレスが、その機能、引いてはサービスを使わないという判断にもなってしまいます。とりわけ子育て中は忙しいので、ストレスなく、楽しく手軽にということをすごく重要視しています」

「『みてね』では、ユーザーが行うのは共有だけで、一度共有すると月別のアルバムとして自動的に整理されます。月齢ごとに成長を見返すことができ、昔ながらのアルバムっぽい感じもあって、特に子どもの成長記録に適していると思っています。また、祖父母世代が直感的に使えることも重要で、リサーチをしながら改善していきました」

現在は50人ほどの所帯に育っているという開発チームですが、当初は5〜6人でスタート。笠原さん自身が出張サポートまで行っていたと、頬をゆるめて振り返ります。

「当初はユーザーも少なく、チームメンバーも限られていたので、リリースから1年半ぐらいは自分一人でユーザーサポートをしていました。電話で話を伺ったり、ご自宅に伺って設定させてもらったりすることで、よりニーズの濃淡が見えてくるというか。当初からユーザーの方たちと一緒に作っていると思っていて、そうした文化は今も変わらず残っています」

楽しい共有体験を
生み出す創意工夫

笠原さんが語るとおり、簡単かつ楽しく思い出を共有できるよう、「みてね」には様々な工夫が凝らされています。

共有相手が写真を見たことを伝える「みたよ履歴」、思い出をランダムに表示するウィジェット、アップロードした動画を凝縮して届けてくれる「1秒動画」、簡単に作成・注文できる写真プリントやフォトブックなど、多彩な機能が思い出の共有の楽しみを広げてくれるのです。

「写真の共有など、自分のアクションに対して十分なフィードバックがある、やってよかったと思えることが重要だと思っています。例えば『1秒動画』なら、3か月、年1回というスパンで自動的に動画を作って、子どもの成長を実感させてくれます。ウィジェットも同様に、忘れかけていた思い出がよみがえってくる喜びがあると思います。『みたよ履歴』では、写真を見るだけでコミュニケーションになるという、そんな手軽さが良いと言ってくれる人も多いですね」

写真や動画を手軽にアップロードできることに加え、保存容量が無制限(※動画のアップロードは1本につき3分まで)となっているのも、「みてね」の強みの一つといえます。

「容量を気にして動画を上げるのは止めようとなってしまうのは残念なので。もうストレージで課金する時代ではないとも思うので、収益に関しては子どもの成長をまとめたフォトブックや写真プリントなど、親として本当に欲しいもの、子どもの成長を家族全員で分かちあうような方向でマネタイズできればと考えています」

ユーザーにストレスを感じさせない快適な操作性はもちろん、運営を支える収益に関しては、仕方なく、ではなく、快く支払えるようなものを用意する——。長くソーシャルネットワーキングサービスの運営に関わり、また「みてね」の一番のヘビーユーザーを自負する笠原さんだからこその入念なサービス設計で、心地よい「みてね」の世界は生み出されているのです。

大切な思い出と絆を
未来につなぐ

ユーザーが「みてね」で共有する思い出は、とても個人的で、大切なものです。それを預かる事業者として、プライバシーとセキュリティ、そしてサービスの継続性については「最重要なこと」と笠原さんは力を込めて語ります。

「自分の子どもが親になった時に使ってほしいし、世代を超えて使ってもらいたいという夢があるので、サービスの永続性について、全責任を持ってやっていきます。プライバシーとセキュリティも同様に最大限留意しているので、安心して使っていただけたらと思います」

プライバシーとセキュリティには最大限留意しているので、安心して使っていただけたらと思います

笠原健治さん

「特に、新型コロナウイルス感染症の拡大で行動が制限されたことで、世界的にアップロード数やコメントが大きく増えた瞬間がありました。離れていても絆をつなぐ方法として、『みてね』を利用して下さっている。家族のコミュニケーションを支えるという大きな役割を再認識しましたし、皆さんの期待にしっかりと応えていかなければならないと強く思いました」

老後は「『みてね』にアップした写真や動画を見ながら、のんびり暮らしたい」と朗らかに語る笠原さんですが、「みてね」の未来について語る口ぶりは、いつもの穏やかなものでありながら、内なる情熱のようなものを感じさせます。

「『すべての子どもがしあわせに暮らせる世界に』という自分たちの理念をしっかり貫きながら、かつ、強いビジネスモデルを内包した、サービスとしての美しさと事業としての強さを両立させていきたいです。最終ゴールとしては、世界中の家族の“こころの支え”になるようなサービスに『みてね』を育てていけたらと思っています」

「『みてね』を通じて離れて暮らす祖父母たちとも日常的につながって、世代を超えて愛情をつないでいく。また、子どもが大きくなった時に見返して、自分のルーツや愛情の履歴を知ることで、自分の存在価値に気づいたり、自己肯定感になっていくかもしれません。そのために、クオリティを磨きながら、サービスを進化させていきたいと思っています」

2020年4月には個人寄付の10億円を原資として「みてね基金」を立ち上げ、子どもやその家族に関する社会課題の解決のためにも行動を起こした笠原さん。「事業と社会的な活動の両方で、様々な課題解決のために行動できる人間になっていきたい」と意気込む氏と「みてね」のこれからに、ぜひ注目してください。

※ インタビューは2021年9月に実施しました。