毎日がアースデイ

10兆個のゴミから世界を救う

Pirika - clean the world

Social Litter Picking

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一年にどれくらいの量のゴミが不法な手段で捨てられているでしょうか。

地球環境にまつわる問題が様々に指摘されていますが、その中の一つが、この人類が出すゴミによる地球環境への悪影響です。適切な方法で集められ、処理され、資源と処分するものとに分ける、という手段で管理されずに、街や自然に遺棄されたゴミは、環境を悪化させてしまいます。

年間でおよそ10兆個のごみがポイ捨てされていると考えています

小嶌不二夫さん。「ピリカ」の創業者兼CEO。

10兆個という膨大なゴミが、日々、地球の至るところで環境を悪化させている。地球という一つの星の環境はすべてつながっていることを思えば、その影響は計り知れません。

今日、4月22日はアースデイです。地球環境について考える日として、世界中で広く知られている記念日です。地球環境の改善を目指して、ゴミの問題と向き合い、ゴミ拾いを楽しくするためのソーシャルネットワークを提供している「ピリカ」を紹介します。

「ピリカ」はゴミ拾いを通じて他の人とつながる、ユニークなAppです。拾うゴミの写真を撮影して、投稿するというシンプルな方法で、同じようにゴミ拾いをしている世界中の人たちとつながることができます。日本語と英語、繁体字中国語、タイ語に対応しており、世界112の国と地域に広がり、これまでに2億3,000万個以上のゴミが拾われています。

2021年3月に、第1回環境スタートアップ大賞「環境大臣賞」を受賞した「ピリカ」は、さかのぼること約10年前、当時京都大学の大学院生だった小嶌不二夫さんが2人の仲間と開発したといいます。

「小学生の頃から環境問題に関心があり、やがて学者として研究するよりも、実際に環境を改善する取り組みを何かしたいと思うようになりました。実際に事業を始めるにあたって、どの分野(どの環境問題)に取り組むかを決め、事業のヒントを得るために、大学院生の時に世界18か国を巡る旅に出ました。アマゾンの熱帯雨林や南アフリカの砂漠地帯などを訪れ、世界各地の大気汚染、水質汚染、ゴミ問題などを目の当たりにしました。そして帰国後、友人2人に手伝ってもらって『ピリカ』を作り始めました」。

3人で半年かけて「ピリカ」を完成させたと言います。最初から大事にしていたのは、「ピリカ」でゴミを拾うことを楽しんでもらうこと。そのためには、どのような体験やデザインを提供したらよいかを模索してきた、と小嶌さんは言います。

「世界一周をしている時に、当時のiPhoneの機能で、iPhoneで写真を撮影すると、地図上に自分が撮影した地点が表示されるというものがありました。広大な地図の上で、自分が行ったことのある点が増えていくのがとても楽しかったのです。やがて、夜に真っ暗な中、写真を撮ったりしました。被写体を写真に残すのが目的ではなくて、世界地図に自分が訪れた地点をピンで残したかったから。その時、人は、自分だけの些細な喜びや楽しみのために、自分にメリットがないことでも、喜んでやるのだと気づきました。それはある意味で、ゲーミフィケーションだと思うのですが、その時の体験が『ピリカ』でも活きています」。

「ピリカ」を開くと、たくさんの投稿があり、多くの人が周囲の環境のためにゴミ拾いに励んでいることがわかります。「マップ」のページでは、現在いる場所の周辺地図が表示され、近所でゴミ拾いをした人の投稿も表示され、身近なところにゴミ拾いの仲間がいることをさりげなく感じられたりもします。こうした可視化をすることで、人の行動が変化するかもしれない、というアイデアは、開発メンバーの1人の修士論文を元に盛り込まれたといいます。

「たくさんの人に、環境に良い行動を起こしてもらいたかったのです。ゴミ拾いの行動が視覚化される面白さ、それとSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)とをうまく組み合わせることで、ゴミにまつわる環境問題の解決を、爆発的に世界に広げていけると思いました」。

Appを開くと、今日までに「ピリカ」を通じて集められたゴミの数が表示されます。そして、自分が投稿すると、また一つその数字が増えたのが可視化されます。そうした小さな工夫が、ゴミを拾うという、ともすると一人で行う作業でありながら、人々をつなぎ、また一つひとつの取り組みが大きな数へとつながることを伝えてくれます。

「ピリカ」はグループで使用することもできます。「グループ」のページで、検索してグループを探して参加するだけでなく、自分でグループを作ることも可能です。身近な人や学校、職場の仲間とグループを作って活用するのも良いかもしれません。「イベント」のタブから、地域の活動に参加する方法もあります。東京都港区の「みなとクリーンアップ!」や富山県の「みんなできれいにせんまいけ!とやま」などがあります。

2011年5月に「ピリカ」のサービスが開始されてから1か月で拾われたゴミは約100個。そのうちの半分は、小嶌さんが自分で拾ったゴミでした。それが今では毎日、世界中でたくさんの人がゴミを拾って、「ピリカ」に投稿しています。3人で始めたサービスは、ボランティアを含めて50人ほどを抱える企業となり、「ピリカ」の運営に加えて、「ピリカ」で集めた情報や「タカノメ」という専門の調査システムによるゴミの分布調査結果などを企業や自治体、国連環境計画(UNEP)などに提供するなど、幅広く活動しています。

小嶌さんは、「ピリカ」を通じて2040年までに達成したい目標があるといいます。

「地球の環境を改善するために、まずはゴミの回収できている量を把握すること。そして回収する量を増やして、10兆個に近づけていきたいと思っています。同時に、流出している10兆個を減らしていくというのも貢献できればと思います。流出量を把握して、その情報を共有することで、流出を止めるプロジェクトや解決手段を作る事業へとつながっていくと考えています。2050年に海を漂うゴミの量が魚の量を超えるといわれています。『ピリカ』で2040年までに、流出するゴミを、拾うゴミの数が上回るようにしていく、というのが目標です」。

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