
心の健康のために
ゆっくり自分にやさしく過ごす
自分だけのリラックス時間を
睡眠は、心と体の健康にとってとても大切なものですが、質の高い睡眠が十分に取れている、と自信を持って言える人は多くないのかもしれません。
厚生労働省がまとめた「令和3年度 健康実態調査結果の報告」によると、「睡眠時間の取れている度合い」で、「寝付きに、時間がかかった」「夜間、睡眠途中に目が覚めて困った」「起きようとする時刻よりも早く目が覚め、それ以上眠れなかった」「睡眠時間が足りなかった」「睡眠全体の質に満足できなかった」「日中、眠気を感じた」という選択肢に対し「上記のようなことはなかった」と回答した人は17.8パーセントしかいませんでした。多くの人が、睡眠に対して何らかの不安や問題意識を抱いている様子が見て取れます。

そんな睡眠の悩みにそっと寄り添ってくれるAppが、「よひつじの森」です。
ヒツジのヨルたちが、毎日決まった時間に寝る、寝る時間になったらiPhoneに触れない、という2つの行動をサポートしてくれます。
目標として設定した就寝時間が来る前に、通知で準備を促してくれるほか、眠る時間になると通知で「おやすみモード」に設定するように知らせてくれます。翌朝になると、ユーザーの行動に応じて「わたひつじ」が生まれ、起床時間やその時の気分をログに残せます。

達成した目標に応じて手に入る「星のかけら」を集めると、偶然森で出会ったヒツジたちのストーリーを、少しずつ読み進められます。
このAppは、集英社デジタル事業部デジタル企画課の漆原正貴さんと、株式会社ENDROLL代表取締役の前元健志さんが中心となって開発されました。
「よひつじの森」は、二人の「誰かの人生に寄り添うような物語を届けることができれば、それは人の生活自体をよくすることができるのではないか」という考えから生まれたといいます。
漆原さん:「例えばスポーツのマンガを読んで、それに影響を受けてその競技に打ち込んだりすることって、あると思うんです。自身の編集者としてのキャリアの中で、フィクションが人生に影響を与える例を身近に感じたことが多々ありました。そんな中で、前元さんとお話ししていて、日常の、ちょっとつまらないなとか、なんだかつらいなとか、なんとなく不安だなと思っている気持ちを、いい方向に転換できるような物語体験を作ることができたら、それはとても価値のあることではないかと思ったのです」

以前から交流があった漆原さんと前元さんは、共に取り組んだプロジェクトが終わった後、次回作もぜひ一緒に作りたい、という漆原さんのたっての希望で、次の取り組みを考えるようになりました。
漆原さん:「様々な可能性を検討していた時、自分自身の、寝る前にスマートフォンをつい触ってしまい、それほど必要でもないのに寝るのが遅くなったりする、スマホ依存の習慣に思い当たりました。その習慣を改善して、自分の時間を取り戻したいなと思い、『スマートフォンを使わなくなるようなAppって作れませんか』という話を前元さんとしたんです」

ちょうどその時、前元さんには、睡眠について課題を抱えている友人が身近にいたといいます。
前元さん:「友人は眠れない夜に、罪悪感やモヤモヤした気持ちの中で、どうしても嫌なことを考えてしまったりすると悩んでいました。睡眠の質を改善する寝具やサプリメントなども試していると聞いたのですが、結局のところ、その寝られない時間の過ごし方にポイントがあるのではないかと感じ、それを少しでも解消できる方法がないか考えていました」
お互いが関心を持っていた、睡眠にまつわる課題について話し合ううち、眠れない夜に寄り添うAppが作れるのではないか、というアイデアにまとまっていきました。
「よひつじの森」は、睡眠目標を達成することで、徐々に進むヒツジたちの冒険のストーリーを楽しめます。「ストーリーの続きを読みたい」「またヒツジのヨルに会いたい」といったユーザーの気持ちが、再びAppを開くモチベーションにつながっています。
このストーリーこそが、「よひつじの森」を、睡眠を記録するAppではなく、睡眠に悩みを抱える人に寄り添うAppたらしめているポイントです。
前元さん:「人に寄り添う物語によって、眠れない夜の過ごし方が少しでも楽しくなればいい、という想いが最初にあったので、ストーリー、特にキャラクターに愛着を持ってもらうことを最重要視しよう、と漆原さんと決めました。その結果、開発期間のほとんどはシナリオを書く時間になりました」

ヒツジのヨル、ソンノ、ナハトが「夜明けの海」を目指して旅するストーリーは、前元さんらENDROLLのスタッフが執筆し、編集者である漆原さんからの厳しいチェックを経て、実装されています。
漆原さん:「集英社には、魅力的な物語やキャラクターを作るためのノウハウが、先輩から代々伝わっています。先輩たちが培ってきた物語との向き合い方は、新しいエンターテインメントや、新しいAppなどにも還元していけるんじゃないかと思っています。ENDROLLのみなさんは、“これが好き”という明確な価値観を持っている人たちでしたので、作家さんと関わるのと同じように仕事ができました。
『よひつじの森』では、自分から提案して、関係する人たちみんなでヒツジのいる牧場に丸一日滞在しました。デザイナーさんはずっとデッサンしたり、シナリオを書く前元さんはそれぞれのヒツジの性格が分かるくらいまで観察したりと、思い思いに過ごしたんです。そうして持ち帰ったものや、その時のことを思い出しながら、ヒツジのかわいさって何だろうか、ということをずっと考え、半年くらいかけてストーリーを作り上げました」
前元さん:「グラフィックやUX(ユーザー体験)など、開発の部分はENDROLL側が中心に意思決定を行ったのですが、ストーリーや登場するキャラクターについては、漆原さんにOKをもらえるまで、何度も検討を重ね、書き直しを繰り返しました。ここは厳しくご指導いただきました(笑)」

漆原さん:「ちなみにマンガ雑誌『週刊少年ジャンプ』がそうであるように、ユーザーアンケートも重視しています。現在もDiscordに作った公式コミュニティ『ヨルトコロ』で、クリア後の方などにアンケートを取っているんですが、キャラクターの人気が非常に高く、寝る前のスマホ依存が改善した、入眠時の気分が改善した、といってくださる方が非常に多くいらっしゃいます。ホーム画面のヨルくんを触ったら動く機能などは、アンケートから誕生しました」
「よひつじの森」は、睡眠習慣を作るAppだとはうたっていません。あくまでも「眠れない夜を楽しむ」点を重視していると漆原さんは話します。
漆原さん:「早く寝ようとか、習慣を作ろうとか言われると、そこで構えてしまう人もいると思います。ですから、今を肯定するAppにしたいと考えました。Appの設計で言うと、目標時間までに入眠できなくても、デジタルデトックスに失敗しても、わたひつじが生まれてくるようになっています。これは、毎日続けてくださるだけでも、なにか嬉しいことが起きてほしいという考えがあるからです。眠れないことを否定しているわけではなく、眠れるようになるに越したことはないのですが、この場所に来てくだされば、それ自体がすてきなことだ、ということを、メッセージとして込めたいと考えて、ストーリーや世界観で表現しています。

ペナルティの導入についても議論はしましたが、結局入れませんでした。『早く寝なさい』と叱ってくれるヒツジのキャラクターなども、可能性としては存在したのですが、そうではなくて、どうやったら寄り添えるかを考えて作った結果が今の形なんです」
そして、使い続けることでいい睡眠習慣が身につけば、いずれはAppを必要としなくなっていい、と前元さんは言います。
前元さん:「人が習慣を身につけるのに、何日ぐらい必要なのかをリサーチしたところ、文献によって差はあるものの、だいたい2か月から3か月だということがわかりました。そのため、それくらいの期間使っていただいたら、卒業できるような設計思想になっています。ストーリーでもそういう瞬間がやって来ます。

社名のENDROLLに込めた想いでもあるのですが、どんなコンテンツにも終わりがあります。だからこそ、自分たちは終わった後にどれだけ価値を残せるかにこだわっています。ですから『よひつじの森』にも、終わりがあります。一人で眠れるようになったら、いい睡眠習慣が身についたら、卒業していく。実際ユーザーアンケートで、『サブスク期間が切れたらそのままヨル達から卒業したいと思います』というコメントをいただいたことがあるのですが、とてもうれしく思いました」
ヒツジたちと会うために使い続けることも、眠れるようになってAppを削除することも、ユーザーに委ねられている「よひつじの森」は、寄り添ってくれる存在があることの大きさを感じさせてくれます。もしあなたも眠れない夜を過ごしているのなら、ヒツジたちに会ってみませんか。
