アプリカルチャー

挑戦する自由を子どもたちに

新しいやり方を模索して、試して、世界に解決策を提案する。多くの大人たちと同じく、子どもたちもまた、テクノロジーの使い方や可能性を正しく理解して、身近な学校生活の中で生じた問題や課題の解決策に活用しています。

東京成徳大学高等学校の6人の生徒たちは、手にしたデバイスやAppを駆使して、2020年からの学校生活を思い出深いものに作り上げてきました。このストーリーでは6人の物語と、彼らの創造を支えたAppのデベロッパたちから届いた若い創り手たちへのメッセージを紹介します。

コロナ禍の状況で、学校行事で 「YouTube」を使ったり、動画で配信したりするようになりました

大橋紡さん。東京成徳大学高等学校3年生、生徒会長。

東京成徳大学高等学校の3年生で生徒会長を務めた大橋紡さんが高校に入学した2020年4月は、まさに緊急事態宣言下で、授業や課外活動、学校行事など、あらゆるものが制限された時期でした。

「オンライン文化祭をやれることになり、各クラスに動画を作ってもらい、学校のWEBサイトを作って動画を公開しました。先生方に相談して許可をもらい、生徒たちの演奏する様子を『YouTube』の 『YouTube Live』を使って、校内の生徒と先生のみが視聴できる状態で配信しました。また後日、アーカイブを期間限定の限定公開で保護者にも配信しました」

体育祭の時には、密になることを避けるため、生徒全員が校庭に集まれませんでした。そこで、生徒会でX(当時はTwitter)のアカウントを作り、教室にいる生徒たちに向けて、次の競技のアナウンスや競技結果を発信したと言います。

「教室から競技の映像が見られるように、『Zoom』で全校生徒に配信もしました。1年目は体育館にWi-Fiが入っていなかったり、iPadを脚立で立てて撮影したり、足りない設備や機材をアイデアで補いながら、やり方を模索して、みんなで試していきました」

学校に登校できず、みんなが孤立しがちな時につながる方法を伝える動画を作りました

平木さくらさん。東京成徳大学高等学校3年生、生徒会メンバー。

東京成徳大学高等学校では、全校生徒に一人1台iPadが支給されています。平木さくらさんは、授業でiPadに触れたのがきっかけで、自然と自分で画像や動画を作ってみるようになったと言います。高校1年の学校に登校できなかった時期に、平木さんは大橋さんたちと、生徒たちの孤独感を和らげることにつながればと、ソーシャルネットワーク上で同じハッシュタグをつけてつながる方法を紹介する動画を「Keynote」で作りました。

「制作中は仲間と一度も直接は会えず、すべての工程を『Zoom』を使ってリモートで話し合い、留学時に知り合った海外の仲間にもサポートしてもらい、世界中の若者がつながれるよう、複数の言語で字幕をつけました」

そこから平木さんは、動画制作やデザインにさらに興味を持ち、動画編集ツールの「Adobe Premiere Rush」や、画像編集ツールの「Adobe Photoshop」や「Adobe Illustrator」を使うようになりました。将来は海外の大学に留学し、動画やウェブなど、広い範囲でデザインを学びたいと考え、英語のネイティブ話者が使う表現を学べる「Distinction」を使って学習しています。

平木さんが夢を実現するための学びに使っている「Distinction」を開発する株式会社東京アプリ開発の加藤秀和さんは、こう語ります。

「Distinctionは、ネイティブ話者と日本人との間に存在する語彙力のギャップを埋めるというコンセプトで制作されました。本Appが少しでも皆さまの英語力向上とグローバルな活躍に貢献できればうれしい限りです。ネイティブ表現で、世界へ羽ばたけ!」

Appを使うと色々な楽器を演奏できるので、組み合わせたら作曲できるかもと思いました

齊藤大和さん。東京成徳大学高等学校1年生。

1つのAppや、1台のデバイスが夢の始まりにもなります。1年生の齊藤大和さんも、先生に頼まれたのがきっかけで、iPadを使って作曲を始めました。

「元々ピアノをやっていました。ゲーム音楽が好きで、授業で初めて『GarageBand』を知り、触っているうちに作曲できるかもと思い、作り始めました」

授業では「Xcode」の使い方や、プログラミング言語の「Swift」「Python」なども学んでいます。授業で自由に作りだせるツールに触れたことをきっかけに、生徒たちは自分の興味のおもむくまま、学びを広げていきます。齊藤さんの作った楽曲を使って、同じ1年生の安田琉河さんは動画を制作していますが、そのきっかけも最初は授業でした。

幼稚園の頃からiPhoneを使って遊んでいました。プログラミングや3Dモデルの制作で知りたいことが出てきたらYouTubeで解説動画を調べて観ています

安田琉河さん。東京成徳大学高等学校1年生。

「中学の授業で動画を編集してみよう、というのがあり、興味を持ち始めました。iPadで撮影して、『iMovie』で編集しました。字幕を簡単に入れられ、エフェクトも豊富なので使いやすいです」

安田さんは幼い頃からデジタルデバイスに触れて、コードのブロックを組み合わせてプログラミングを学んでいく「Scratch」などを使っていました。最近は3Dモデルを作成できる「Blender」というツールをMacbook Proで使いながら学習しています。

生徒会で動画配信用に撮影機材を購入したことを知り、安田さんは撮影用に生徒のVTuberキャラクターを作ってみようと、友達が描いた原画をもとに3Dで作成しました。そして大好きなゲーム「Sky 星を紡ぐ子どもたち」のキャラクターも見様見真似で自分で3D化してみたと言います。

実際のゲーム「Sky 星を紡ぐ子どもたち」のキャラクター

安田さんが独学で「Sky」のキャラクターを3Dで作ったことを知った同ゲームのデベロッパのVisual Development LeadのYuichiro Tanabeさんは、次のようなコメントを寄せてくれました。

「細かいところまでよく再現されていますね! 次は、このキャラクターでどんな場面を作りたいのかを想像してみましょう。プレイヤーに“何”をさせたいのかをイメージすることが、ゲーム制作の第一歩です。可能性は無限大、Sky is the limit!」

YouTubeやTwitterで音楽のコード進行について発信している人たちをフォローして、作曲について学びました

関屋さくらさん。東京成徳大学高等学校3年生、生徒会メンバー。

関屋さんは生徒会の動画用に音楽を制作していますが、授業で「GarageBand」に出会うまでは音楽の経験はなく、家には家族のアコースティックギターが1本あるだけだったと言います。

「授業がきっかけで作曲を始めました。最初はMIDIキーボードも何も持っていなかったので、iPadやMacBookの文字盤をタイプして作曲をしていました。作曲で知りたいことが出てきたら、ソーシャルネットワークなどでやり方を発信している人を探して楽曲の制作を学んできました」

作りながら学ぶスタイルで、独学で学んできたと言います。文化祭のテーマソングも、作りながら学ぶスタイルで、夏休みに1か月かけて制作しました。

クリエイティブツールを提供しているアドビ社のデジタルイメージング バイスプレジデント Maria Yapさんは、新しいものを作る旅を始める若い作り手たちに向けて、こんなアドバイスを共有してくれました。

「アドビは、クリエイターの皆さんが自分の作品に命を吹き込み、自分自身の表現のサポートができることをミッションとしています。若い皆さんには、怖いと感じたり、自信がないと感じたりしたときには、いつでも立ち止まって『起こりうる最善のことは何か』と考えてみることをお勧めしたいです。確かにリスクを取るのはだれでも怖いことです。しかし、ポジティブな可能性を考えるだけで勇気と強さが湧いてきます。今、この瞬間こそが、新しいチャンスをつかみ、クリエイティブなビジョンを実現できる絶好の機会だと思います」

井戸根美花さんも、創造の旅へ勇気を持って踏み出した一人です。

学校にお客さんを呼べない環境でも発信する機会を提供したくて、ドローンとカメラで奮闘しました

井戸根美花さん。東京成徳大学高等学校3年生、生徒会メンバー。

井戸根さんは生徒会の撮影係として、学校の行事やイベントの撮影をして、編集をしてきました。

「行事に参加できない保護者にも臨場感のある映像を届けたいと思い、校長先生に許可をもらって、ドローンの資格を取得しました。体育祭や文化祭ではドローンを飛ばして撮影し、生徒会から配信する動画を作成しました」

井戸根さんは、学校中の思い出をカメラに収めようと、イベント前後の膨大な時間を一人で撮影し続けました。学校中のみんなの準備風景や、実際のイベントの様子をできるだけ撮影しておきたかったのだと言います。体育祭では徒競走の臨場感を捉えようと、何度も何度も上空にドローンを打ち上げました。

みんなのためにという強い思いで、井戸根さんは大橋さんたち仲間と、ないものを作るために立ちはだかる難問を一つ一つ突破していきました。その影には、生徒たちを信じて、挑戦を見守り続けた先生や保護者の姿があります。

人を信じることで自由が生まれ、それは創造力をどこまでも高く育んでいく。そしてより良い世界のために挑戦する情熱が、大人も子どもも、世代も場所も超えて、創る人たちをいつの時代でもつなげていきます。

このインタビューは2022年10月に実施しました。