超えていこう

給水Appで世界を変える

誰もがプラスチックごみの削減に貢献できる社会を目指す、マクティア・マリコさん。

mymizu

mymizu! 給水できる場所を簡単に探せるアプリ

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環境や社会のために誰もが貢献できる、そんな仕組みを作り出した人がいます。

見えない障壁を乗り越えて、その人は前進してきました。壁は私たちを守ることもあれば、互いを隔てることもあります。それを超えようとした時、Appが新しいきっかけや手段となりました。

App Storeでは「超えていこう」をテーマに、今まさに、様々な領域や分野で新たな一歩を踏み出し、この世界をより良い場所へ変えるための行動を起こしている4人の物語を紹介します。

水分補給は誰にとっても必要なことで、しかも、より良い世界の実現のために貢献できる。それが給水Appだったんです

Social Innovation Japan マクティア・マリコさん

2019年に給水App「mymizu」を立ち上げたマクティア・マリコさんは、プラスチックごみを減らし、消費行動を変えることで、誰もが世界的な環境問題の解決に具体的に貢献できると証明してきました。

社会のためにできることを探して

「mymizu」を立ち上げたマクティアさんは英国で生まれ、クラシック音楽の演奏家の両親に育てられたことで、早くから環境や社会問題を意識するようになったと言います。

「両親の仕事に連れられて、早くからヨーロッパや中国、日本などのあちこちに行って、色々なものを見たり、人と触れ合う機会が多かったんです。その中で、地域ごとの貧富の差や環境の違いへの気づきがあって。また、ロンドン郊外の公立中学校に進学した経験も、自分に大きな影響を与えてくれたと思います。

移民を含めて人種が多様で、両親を失ったり、貧困問題にも直面してたりしていた“問題児”とも言われてしまうような子がクラスメートにいたことで、色々な意味での多様性に触れる機会が多かったと感じます。自分は子どもなりに好奇心や正義感も強かったので、世の中を良くしていきたいという気持ちが、当時からあったみたいです」

ロンドンの大学で母方のルーツでもある日本や日本語について学んだマクティアさんは、卒業後に日本の新聞社の英国支局で記事の作成に携わり、その後、日本へ移住して駐日英国大使館で働きます。そこで両国の橋渡しをしながら、日本で自分にも何かできることを始めたいと思うようになったそうです。

「英国大使館では、英国と日本のスタートアップ企業や研究機関が相互につながるためのサポート業務に携わって、すごく面白かったんです。その中で、英国では社会的な課題を技術で解決するようなスタートアップが多いのに、日本にはまだ少なくて、もったいないと感じました。そこで、自分にもできることを考えて、一般社団法人Social Innovation Japanという、社会的な課題や環境問題に取り組む非営利の組織を立ち上げたんです。

環境問題について気になったのは、日本の消費者と企業の関係を見た時に、企業はサステナビリティに取り組みたいのに、そういう商品が消費者に選んでもらえない。消費者の側からすると、もっと選択肢がほしいのに、代替品を出してくれる企業が少ない、ということでした。両者が上手くつながるような仕組みが、もっと必要だと思ったんです」

その後、課題への取り組み方を試行錯誤していたマクティアさんに、具体的なアイデアにつながる気づきが訪れます。それは、2018年のことでした。

「たまたまSocial Innovation Japanの共同代表のロビンと沖縄に行って、使い捨てのペットボトルがビーチに散らかっている光景を見たんです。日本では水道水が飲める環境があるのに、すごく矛盾していると思いました。その話を2人でしていた時に、これは誰もが解決すべきだと思えるし、取り組む意味がある問題だと思えたんです。

水分補給は誰にとっても必要なことで、一つのシンプルな行動でゴミ問題に取り組める。そこから、個人が参加しやすい消費行動と、企業の活動をつなげられる仕組みを考えました。しかも、取り組むことで個人が企業に対して声を上げたり、より良い世界の実現のために貢献できる。その最終的なアイデアが、給水Appだったんです」

給水から広がる行動の輪

「mymizu」は、外出時に利用できる身近な無料給水スポットを教えてくれます。「給水マップ」をタップすると、周囲にあるカフェや公園などの給水スポットが表示されるので、マイボトルを持って立ち寄ってみてください。店員がいる場合は、Appの画面を見せるとスムーズにやり取りできるでしょう。

「mymizu」には、すでに世界各地で20万か所以上の給水スポットが登録され、2,300以上の飲食店やホテルなどが、給水パートナーとして加盟しています。マクティアさんによれば、Appを使うことで、ペットボトルの消費量を削減できるだけでなく、さらなる意識や行動の広がりも生まれていると言います。

「『mymizu』を知った若者たちがグループになって、自分たちの住む地域に給水スポットを増やすための活動をしてくれることがあるんです。京都府の亀岡市では高校生がAppを宣伝するポスターを作って、給水パートナーの店舗を増やすために配ってくれました。沖縄県の宮古島でも、小学生が地元のテレビ番組に出て『mymizu』の存在を広めてくれたんです。私たち自身が、そういう行動の一つひとつに感動したり、学びを得たりしています。

自作の「mymizu」ポスターを持つ、亀岡市の高校生(令和2年度卒業生)。

マイボトルを持つだけではなくて、他のことも始めました、という声があるのもすごくうれしいです。例えば福井県のレストランでは『mymizu』をきっかけに、日々のメニューから箸の仕入れ先や内装のことまで考えるようになって、ミシュランガイドがサステナブルなレストランを評価する“グリーンスター”に掲載された、という報告をもらいました」

給水を終えて「給水トラッカー」に記録したら、あなたも「mymizu」でつながるコミュニティの一員です。これまでの給水履歴と、自分が削減できた使い捨てペットボトルの本数やCO2の量を見てみてください。また、コミュニティ全体での様々な削減量も確認できるので、日々の給水への取り組みを後押しする、確かな手応えを感じられるでしょう。

誰でも一歩を踏み出せる

日々の給水という身近な行動から、誰もが環境問題の解決に向けて貢献できる仕組みを作ったマクティアさんですが、彼女のような成果を得るためには、ぜひ心理的な壁を超えて行動に移してみてほしいと言います。

「実は大使館の仕事をしていた時はまだ自信がなくて、全力で起業に向けて取り組むまでに時間がかかったんです。周囲の起業家は男性がほとんどで、自分が起業するイメージが持てない中、女性の起業家や投資家に出会えたことが、大きなきっかけになりました。

自分のロールモデルだと思える人がいるかどうかは、とても大事なことだと思います。もし私のこういう話を聞いて、起業に限らず、自分の実現したいと思ったことを形にする力があるかもしれないと思ってもらえる人がいたら、それが本当にうれしいことなんです」

Appの開発についても、これから取り組む人へ、マクティアさんは「mymizu」の経験を踏まえて、このようにアドバイスします。

「私たちの場合、最初からきれいなものを作るよりは、まずあまり費用をかけずに、実際の需要があるのか、本当の問題解決につながっているかを確かめようとしました。その結果、ベータ版のAppで地図とピンだけがあるような状態でも、80くらいの店舗が登録してくれたんです。そこで手応えを得られたので、本格的にパートナーや資金を集めて、Appの開発に取り組むことができました。

もちろん、すべてが上手くいったわけではなくて、ビジネスモデルとしてはいまだに苦労している部分もあります。Appの利用も、お店の登録も無料なので、規模が大きくなった時にどう運営していくのかは大きな課題です。そこは、パートナーの企業からの支援や、個人に月額500円から支援してもらう“マンスリーサポーター”という仕組みに助けられています。

それでも、『mymizu』がここまで来られたのは、コミュニケーションを重視して、こんな世界を作りたい、一緒に作りませんか、というメッセージを発信してきたことで、自然と声をかけてくれる人や組織が、どんどん増えたからだと思っています」

マクティアさんがたどってきた人生の軌跡は、あなたが「mymizu」を使うことであなた自身の物語と重なり、そこから別の課題や壁を超える、新たな広がりを生むのかもしれません。ぜひ、その可能性を信じて一歩を踏み出してみてください。

Appは自分らしい生き方を創造するための道具となり、閉塞した環境を乗り越えて進むための突破口ともなります。”超えていこう”とするすべての人たちに向けた、他の3人のストーリーをリンクから読むことができます。

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