「Swift Playgrounds」は、まるでゲームを楽しむような感覚で、iPadを使ってプログラミングを学べるAppです。実際にiPhoneやiPadのAppを開発するのに使われる、「Swift」というプログラミング言語を使ってキャラクターのByte(バイト)たちを動かし、ステージをクリアしていくことで、プログラミングの概念やコーディングの基礎、そして実践的なスキルが身に付きます。 親子で一緒に「Swift Playgrounds」に取り組むことは、子どもたちの自信を育むことにつながると、佐賀県の公立中学校でiPadと「Swift Playgrounds」を教育に取り入れている中村純一先生は話します。教育界を変革するための方法を模索している教育者「Apple Distinguished Educator」でもある中村先生に、「Swift Playgrounds」を通じて子どもたちに芽生えた変化やプログラミング教育へのアプローチについて伺いました。
初めて「Swift Playgrounds」に触れたとき、どのような印象を持ちましたか。
ステップバイステップで一つずつ学べるし、すごくいいなと思いました。そしてこれが、いろいろなことにつながっていくなと。プログラミングを学べる環境には「LightBot」や「Scratch」などもありますが、「Swift Playgrounds」は実際にコードを書いていくので、この先に世の中と結びついている感覚がありました。
「Swift Playgrounds」はiPadさえあれば取り組めるので、どこででも好きな時にプログラミングにすぐ手が届く。そこがいいですよね。子どもたちがやりたいと思ったらいつでも取り組める、そういう環境を整えることが大切なので。
生徒たちからは、どういった反応がありましたか。
正直なところ、最初の反応はByteが「なめくじみたい!」でした(笑)。
でも、コマンドを使って動かしたときには「おぉ!」と驚きの声が上がって。ある生徒は、コマンドの入力を間違って壁にぶつかったときに、おなかが揺れるアクションを見て「かわいい!」と言っていました。それから先は僕が何も言わなくてもキャラクターを変えたり、自分たちでどんどんやり出しました。
生徒たちはByteを動かすというより、ステージをクリアしていくという喜びがあるようです。実際にはコードを書いて動かしているわけですが、その意識が彼らの中にはないというか。大人たちが思うほど、コードを書くことを難しいと思っていないようですね。 教育界では「メタ認知」と呼ぶのですが、「これをこうしたら、こうなるんじゃないか」という考え方を働かせて、自分たちでどんどん進めていました。なんでこんなに軽々とやってしまうんだろうと、驚くくらいに。 「Swift Playgrounds」でプログラミングを学ぶことで、生徒たちにどのような影響が見られましたか。 パソコン部のある男子と女子は、「Swift Playgrounds」でプログラミングに興味を持って、なんと今、Xcode(Appleのソフトウェア開発ツール)の勉強をしています。実際、多くの子たちがソフトウェアやサービスの開発に興味を持っていますね。ある子は起業したいとも言っていました。 僕は「Swift Playgrounds」の理念というか、プログラムを書くことで、最終的には社会とつながっていくということを伝えてきたつもりです。だから、彼らもただコードを書くだけじゃなく、常に人の役に立つことを意識していて、「将来、僕も人の役に立つアプリケーションを作ってみたい」と言っています。
素晴らしいですね。親子で「Swift Playgrounds」に取り組む際、学びをサポートするために、どのようなことを意識すればよいでしょうか。
僕としては「共に学ぶ」という姿勢がいいと思います。自分も学びたいという姿勢を見せるというか。「教師の『さしすせそ』」という言葉がありますが、「さすがだね」「知らなかったなぁ」「すごいね」「センスいいね」「その調子!」と、「さしすせそ」がうまく使えると、子どもたちは自信が持てるようになるんです。
うまくいかなかったときには、「何を使ってみる?」「他に参考になるものはないかな?」とか、答えをすぐに与えずに、可能性のあるものとつないであげることも大切だと思います。
宇宙飛行士は、宇宙に行く前に何年もトレーニングをしますよね。それは、人は失敗するという前提のもと、想定できるトラブルへの対処法を全部トレーニングするからです。子どもたちも失敗をするのが当たり前なので、そこを大人がどうサポートするかを考えてほしいです。失敗は成長できるチャンスだと思うので。
個人的には「自分でできる、自分はできる」がキーワードだと思っています。要するに、自分でできるだけじゃなく、自分はできるという自信ですね。これは「Swift Playgrounds」にも当てはまると思います。自分でコードを書いてByteを動かせたということが、彼らの自信につながっているのです。 子どもたちにはまず「自信」を持ってもらうことが重要だということですね。 そうですね。「何をやってるんだ!」と厳しく指導する時代もありましたが、今はその逆で、本当に自分でやれるんだという自信を持たせてあげる、そのアプローチが大事だと思います。自分はできるんだという自信を持って、そういう経験を積み重ねていってもらいたいですね。 大人になる過程で様々なことにぶつかると思いますが、「Swift Playgrounds」やプログラミングをやっていた時はこうやったらこうなった、ということを意識して、たくましく乗り越えていってもらえたらと思います。