「Monument Valley」のリードデザイナーが手がけた「Florence」のサウンドトラックには、20の楽曲が収録されています。恋に落ちる若い二人のキャラクターをそれぞれイメージした楽器から奏でられるメロディーは、彼らが紡ぎ出すストーリーと見事な一体感を作り出しています。
どの曲も1~2分と長くはないものの、豊かな感情に満ちています。1曲目を飾るメインテーマは、シンプルなピアノの調べで始まります。甘く、物憂げな曲調は、フローレンスの性格を思わせます。ゲームでフローレンスがクリシュの演奏を聴いて恋に落ちたように、やがてチェロのパートが始まります。
このような感情の機微を巧みに表現するため、デベロッパのMountainsが白羽の矢を立てたのは、「Deemo」などのゲームで知られる作曲家のKevin Penkinさんでした。楽器をキャラクターに割り当てたのも彼の発想で、そのアイデアに肉付けしていく形でサウンドトラックを完成させたといいます。
「メインのピアノとチェロを引き立てるように、フルート、クラリネット、バイオリン、電子楽器の伴奏が入ります。これは、二人のやり取りに物語として背景を持たせるためです」とKevinさん。
「Happy Together(幸せな二人)」 、「Fight(ケンカ)」、「Drifting(さまよう心)」など、シンプルで分かりやすいタイトルの曲で二人の恋の行方を追っていきます。
二人の恋が最高潮に盛り上がったとき、演奏の調和もクライマックスに達します。ところが、つまらない口ゲンカから、意地の張り合いになってしまいます。仲直りできずにいるフローレンスの心を、ソロで演奏されるピアノの調べが映し出します。二人が出会う前のように。
心に残る美しい楽曲の数々は、それだけでも聴きごたえ十分のクオリティです。正式なサウンドトラック作品として、「Apple Music」のストリーミングで聴けるほか、「iTunes」からのダウンロードも可能です。