インディーズ スポットライト

Florenceの未公開シーン

Florence

恋と人生の物語

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アートやテクノロジーにおいて、App StoreのAppやゲームが目指すべきデザインやイノベーションの手本を示したデベロッパへ贈られるApple Design Award。「Florence」は2018年の同賞に輝いた、心を揺さぶられる作品です。

クリエイティブディレクターのKen Wongさんに、「Florence」の開発に隠されたストーリーを聞いてみました。

「『Florence』の制作は、まさに発見の連続でした」と、Wongさんは語ります。「恋愛の様々な瞬間を描こうとする時、プレイヤーに正しい感情を呼び起こさせるには、たくさんのイメージやインタラクションを使って試行錯誤する必要がありました。完璧な組み合わせが見つかるまで、何度も何度もやり直しました」

「アートスタイルを何パターンも試したり、ストーリーボードを練り直したり。一度は完成していたのに、やむを得ず最終版からはカットされてしまったステージやセクションもあります」

どういったアイデアやコンセプトが日の目を見ることなく消えていってしまったのか、Wongさんが私たちだけに明かしてくれました。以下はストーリーの展開に関わる情報を含みますので、まだプレイしていない人はご注意ください。

断片

「これは『Florence』が『Fragments(断片)』というタイトルで呼ばれていた頃の、初期の試作ポスターです。最終版のアートスタイルへ向けて、最初の一歩を踏み出した時期でした」

成長

「これらは、幸せな女の子から悩み多き大人の女性へと成長していくフローレンスという同じアイデアを使って、2パターンのデザインを実際に作って検証した時のものです。どちらの画像でも、プレイヤーはジグソーパズルを完成させなければなりません。フローレンスの人生が複雑になっていくのに合わせて、ピースが増えていくという仕掛けです」

「テスト中にわかったのは、プレイヤーがパズルを解くのに気を取られるあまり、肝心の画像を覚えていなかったことです。最終的にパズルは時計に置き換え、フローレンスの子ども時代の様々な場面が映し出される形に落ち着きました」

時計

「これらは初期の試作ステージで、時計の針を回すことによって、フローレンスとクリシュの一年が過ぎていくのを眺める仕掛けになっていました。素敵なストーリーも考えてあったのですが、最終的には最適なやり方とは思えず、やむなくカットしました」

恋の始まり

「このシーンは、フローレンスがクリシュに恋していることを表現しようとしたものです。プレイヤーが足跡ボタンをタップするたび、フローレンスがハートマークと共にクリシュへ近づいていきます。平凡なアイデアに思えたのでカットしましたが、システムそのものは少し形を変えて、フローレンスがクリシュに音楽学校の受験を勧めるシーンで復活しています」

距離

「このシーンでは、クリシュとフローレンスの心が離れてしまったことを伝えようとしました。ソファのジグソーパズルを埋めていくほど、ふたりが互いに遠ざかっていくのです。最終的には『Drifting(さまよい)』の章と似通ってしまうのでカットしました。『Drifting』のほうが、同じアイデアをより力強く表現できていましたしね」

こうした入念な編集プロセスを経て、より豊かな作品に仕上がった「Florence」。すべてのシーンが、物語をスムーズに進行させ、プレイヤーの感情を揺さぶるようにデザインされています。

ゲームのシステムを使ってストーリーを語ることを、これほど巧みにやり遂げてみせた作品は他に類を見ません。「Florence」は、ダウンロード必須の名作と言えるでしょう。