Appleのプラットフォームにおいて、Appが目指すべきデザインやイノベーションの手本を示した、クリエイティブな芸術性と高度な技術力を併せ持つデベロッパへ贈られるApple Design Awards。2019年度の受賞作品の一つが、創意あふれるパズルゲーム「Ordia」です。
「Ordia」を制作したLuke Hollandさんは、これまでに山のようなフィードバックを受け取りましたが、その中に繰り返し登場する、共通のテーマを見出したといいます。どうやらゲームをプレイした人たちは、主人公のことが心配で仕方ないらしいのです。
「あのスライムみたいな生き物に、皆さんずいぶん同情的なのです」と、Hollandさんはロンドンの自宅で笑います。「多くの方が共感を覚え、スライムを心配する方もかなりいました。おそらくキャラクターが目玉だからじゃないでしょうか」
「Ordia」は巧妙なアイデアと鮮やかなビジュアルを組み合わせた、指一本で遊べるアクションゲームですが、プレイヤーが操作するのは、確かにそう、目玉なのです。太古の世界を探検する新たな生命体となったあなたは、自分自身をスリングショットのように弾き飛ばしながら、ぶくぶくと音を立てる異世界の中を旅していきます。
ゲームは目玉のキャラクターをドラッグして狙いをつけ、イソギンチャクのような障害物を避けつつ、点から点へと飛び移っていくだけです。操作は至ってシンプルですが、全部で30あるステージは少しずつ難易度が上がるので、次第に手ごわくなっていきます。
そんな「Ordia」の原始の世界がどのように誕生したのか、Hollandさんが語ってくれました。
「デザインありきでストーリーは後から考えました。一匹のスライムが動き回る世界では、どういったストーリーがあり得るだろうと、考えを巡らせるのは楽しかったですね。
制作にあたっては2つの点を重視しました。第一に指先だけで楽しめることです。ドラッグして指を放すというプレイの方法も、そうした方針から生まれました。誰でも日頃やっている操作ですし、ゲームを始めてすぐピンと来る操作だと思ったのです。
第二に、縦画面にすることです。一番デバイスを操作しやすい向きですからね。片手で遊べるというのは常にポイントが高いのです」
「それから次の段階へ進みました。例えば、より縦に長いステージをどうやってデザインするかとか、狭くて、しかも常に下向きの重力がかかる空間内に、有意義なゲームの要素をどう作って配置するかといったことです。遊びごたえがあって、しかも難しすぎないゲームを作るには、とても微妙なさじ加減を求められるのです。
隅々まで一貫性があり、考え抜かれているように感じてもらうため、ずいぶんと気を配りました。ゲームプレイだけでなく操作やサウンド、メニューに至るまで、遊び心を盛り込んであります」
「ユーザーの皆さんがゲームで遊んでいる様子を見ていると、スライムがやられた瞬間に悲鳴をあげたり、敵に追われて本気で焦ったりしています。そうした感情的な反応を見るのはとても楽しいですね。ユーザーには『これは手ごわいぞ』と感じてもらわないといけない。手ごわいからこそ、楽しいのですから。実際、私たちはある意味、乗り越えるべき何かを求めて、ゲームをプレイしているのではないでしょうか」