舞台裏

土井善晴の和食に込めた想い

土井善晴の和食 - 旬の献立をレシピ動画で紹介 -

季節の素材を使ったレシピ・家庭料理を動画などでお届け

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その名も「土井善晴の和食」。直球の名前の通り、このAppでは土井善晴さんが、料理研究家としての豊かな知見を惜しみなく披露して、奥深い和食の世界を案内してくれます。「和の心」として、様々な料理の起源などを鋭い考察を交えたエッセイとしてつづっていたり、「食材研究」では、食材の特徴やおいしい食べ方についての仔細な解説が読めたりします。

何より魅力的なのは、土井さん自らが調理し、解説するレシピ動画です。毎週届けられる、旬の食材を活かしたレシピ動画では、食材について、調理法について、あるいはその土台にある食文化についてまで、縦横無尽に語られます。手際よく作られていくおいしそうな料理はもちろん、軽妙でウィットに富む関西弁の語りに、きっと惹き込まれることでしょう。この動画について、「私も楽しんでやっています」と土井さんは語ります。

旬の食材を活かしたレシピをはじめ、Appには和食の奥深い世界が広がっています。

「(Appの良いところは)やはり時間に制約がないことです。料理は予定通りにいかないのがおもしろいところでしょう? だから台本などは用意せずに、自由にやっています。ただ、難しい話だなと思われると観てもらえないから、楽しいとか、面白いなとか、何か共感してもらえるように心がけています」

「カレーは煮込み料理ではない」という持論を展開しながら、タマネギを飴色に焦がして仕上げた具だくさんのかぼちゃのカレー。火力の弱いコンロでもおいしく作れる、しらすの焼き飯。キャベツを大胆に手でちぎって作る、焼きキャベツの味噌汁。どの料理も、手の込んだ仕込みや特別な材料を必要としない、意外なほど簡単にできそうなものばかりです。土井さんの豊富な経験と知識に裏打ちされたシンプルなレシピを見て、これなら自分でも作れると思うかもしれません。

「まずは自分で作ってみてください。必ずしもレシピ通りに作らなくていいんです。いちばん大事なのは、目の前の人に食べさせること。レシピに書かれてある手順や数値通りに、忠実に作らないといけないと思っている人もいるかもしれませんが、もっと自分の感性で作っていいんですよ。レシピに縛られず、自分で考えて料理をすることで、生きていく力が育まれると私は思います」

レシピに縛られず、自分で考えて料理をすることで、生きていく力が育まれます

土井善晴さん

動画の中では「お好みでやってください」「ここは適当に」と、レシピに拘泥せず、自然体で調理するようアドバイスする土井さんですが、若かりし頃には老舗の日本料理店に入り、厳しい指導と自己研鑽によって和食の基礎を学びました。

「私が入った日本料理の世界では、0.1ミリのばらつきをなくしていくというような、宮大工みたいな緻密な仕事をしていました。今みたいに自由になれたのは、それがあったからかもしれないです。ピカソだって、初めからあんなに自由に描けたわけじゃなく、絵画の基礎をしっかり身につけたからですよね。基礎があり、それを発展させるなかで、時に崩しながら大事なポイントを探っていく。でも、料理は命に関わることですから、絶対にしてはいけないことがあります。だから、私が思う料理は、アートではないです。日常とのつながりを切ることはできないからです」

紹介される数多くのレシピに共通することは、素材そのものの味や風味を大切にしていることです。味つけは、素材の魅力を引き出す、あるいは際立たせるために必要最低限に行われます。「和食は、基本的に素材そのものの味でいいという発想なんです」と、土井さんは言います。

自然の恵みである素材そのものを味わうことを大切にしています

土井善晴さん

「日本には、豊かな自然、そして鮮やかな四季があります。生物多様性もすごくある。料理をすることで、それをありありと感じられます。自然は、親父が鉄拳を食らわすように怖いときもありますが、豊かな恵みを与えてくれるというのは、私たちは信じて疑わないでしょう? 私は、その恵みである素材そのものを味わうことを大切にしています。素材を選ぶところから、料理ははじまっています」

このAppを通じて達成したいことを伺うと、土井さんは寸分迷わず即答します。「多くの人に、料理を楽しんでもらうことです」と。

「私は、料理をすると新しい楽しみが生まれるのを感じます。それが幸せになる力になります。Appを使ってくれるみなさんにも、料理を通じて幸せを感じてもらいたいです」

※インタビューは2019年7月に実施しました。