サンフランシスコ出身で日本を拠点とする音楽プロデューサー / アーティストのMatt Cabさんと、「世界茶会」主宰の岡田宗凱(そうがい)さんの出会いや、楽曲「一期一会」が生まれた今回のプロジェクトの背景について紹介しています。

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「すべての茶の湯はそれぞれが違うセッションです。それは一期一会で、その環境に置かれた人々だけが共有できる価値。今回、岡田さんは自分のために『一期一会』というテーマでお茶を点ててくれました。この言葉は自分にも馴染みがあったし、この言葉には言葉以上の意味があるといつも感じていただけに、岡田さんがこの言葉を選んでくれたことをうれしく思っています」

「伝統的な茶道に、新しい解釈を取り入れる岡田さんの考えも含め、すべてをキャプチャしたかった。例えば、曲にでてくるシンセサイザーの音がいい例でしょう。茶道のような穏やかさを持っていますが、楽器としては伝統的なものではなく、新しくモダンな音を奏でます。『新』と『旧』が美しく融合する部分が表現できたと思います」

「PLAYSOUND」で、周りの環境音に耳を傾け、それを元に制作した音楽を映像に乗せ発信してきたMattさん。このプロジェクトにおいて、映像も大きな役割を担っているようです。

「テクノロジーが進化するにつれて、音楽と映像の垣根はなくなってきています。音楽と映像をセットにすることで、一つの体験として、伝えたいストーリーにさらに入り込んでもらえると感じています。情報量が増えストーリーが伝えやすくなりますから」

テクノロジーが楽器だとすると、ソーシャルメディアはステージのような存在

Matt Cab

「周りの環境から音を選んでいる時、同時に何が簡単にストーリーを理解してもらえる映像やイメージなのかを考えています。今回の『一期一会』で言うと、冒頭で使用した音は茶の湯の準備段階で出る音です。これにより、何の音がこの曲の中で使われているかがはっきりとわかります。さらに、この映像がどんなものなのか、イメージがつきやすくなります。映像を撮る時に気にしているのは、それが観る人にとってわかりやすいものであること、さらに、伝えたいストーリーにおいて、象徴的なものであること」

Mattさんは、撮影にマニュアルビデオ撮影Appである「FiLMiC Pro」を使用していると話します。このAppの操作性とアクセシビリティが、彼の制作を支えていました。

「このAppを使う理由はその手軽さにあります。自分の映像撮影は音と同じように、その一瞬をいかに逃さず撮影できるかにかかっています。光の具合を見て、機材をセッティングする時間はありません」

「プロが使う機材に近い、露出、フォーカス、ズームの操作性の良さをはじめ、ディスプレイ上にヒストグラムを表示できるのも気に入っています。光が適量かどうかすぐに確認できますからね。その他にも、『FiLMiC Pro』のライブラリー機能も重宝しています。iPhoneは日常から使うデバイスだからこそ、『FiLMiC Pro』を使って録った映像が、日常を撮影した映像と別々に保存されるのは助かりますね。一瞬を逃さないように、短い時間で確認し撮影できる『FiLMiC Pro』は自分のスタイルにぴったりです」

Macでの映像編集に「Adobe Premiere Pro」を使用していることから、その延長でiPhoneやiPadで使える「Adobe Premiere Rush」を自然に使うようになったというMattさん。

「『Adobe Premiere Pro』の基本的な機能を搭載しているし、とにかく速い編集が可能になるので気に入っています。『FiLMiC Pro』で撮影したものをそのままiPhone上の『Adobe Premiere Rush』で編集できるのがいいですね」

「日本に長年住んでいる中で、多くのものにインスパイアされてきましたが、その中に『働き方』があります。例えば、何十年も刀を作り続ける刀職人を例に挙げると、彼らは全神経を使って刀のディテールを気にし、完璧な一本を作り上げます。自分も気づかないところで、そのような職人の働き方が自分のアーティスト性にも影響を与えていたように思います。ディテールに気を配ること、息子にそれを認識させられました」

テクノロジーが進化するにつれて、音楽と映像の垣根はなくなってきています

Matt Cab

何もかもが新しく、母国とはまったく違う国、日本に引っ越してきたことで得られたインスピレーションや刺激。そして、自身の息子を通じて再発見したディテールに気を配るということ。今回のプロジェクトでMattさんは、音楽にも通じる伝統的な茶道の一期一会な部分に出会い、岡田さんとの一度きりの空間を全身で感じ取り、それを音楽と映像で表現しました。

様々な音や物で構成される私たちが生きる「一瞬」。自身の表現によって私たちとのつながりを模索し続けるMatt Cabさんは、今日も日本のどこかで、その「一瞬」を切り取っているのです。

今回のプロジェクトに使用されたApp