多様な性のあり方について理解を深め、ジェンダーやセクシュアリティにかかわらず、誰もが公正に扱われる社会を実現していくために。毎年6月は「プライド月間」として、世界中でLGBTQ+当事者やアライ(支援者)による様々な活動が行われています。

LGBTQ+とは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア、さらにインターセックスやアセクシュアルなどのセクシュアルマイノリティの総称です。

「ライフ イズ ストレンジ」「If Found...」「Dream Daddy」などのゲームは、クィアの人々を取り上げ、その物語を描いた先駆的な作品として知られています。今日でもLGBTQ+のキャラクターを自然に物語に織り込んだ、新たなゲームが生まれています。

LGBTQ+のゲームでの描かれ方における、静かな、しかし重要な変化について、最近リリースされた3つの作品のクリエイターに話を聞きました。

「Finding Hannah」のHannah

「Finding Hannah」は、色彩豊かなイラストの中に隠されたアイテムを見つけながら、30代後半のHannahという女性の人生について知っていくアドベンチャーゲームです。Hannahがクィアであるという事実は物語の一部にすぎず、ことさら強調もされていません。

「Hannahをクィアに設定したのは自然な選択でした」と、女性が率いるデベロッパ、Fein Gamesでライターを務めるRebecca Harwickさんは言います。「『Finding Hannah』は、語られるストーリーの幅を広げるゲームだと考えています。今は以前と比べて、カミングアウトの話や、クィアが抱えるトラウマについての話を耳にする機会もかなり多くなりました。知り合いにクィアがいるという人も増えてきています」

身近な存在になったからこそ、物語も進化してきたのだと、Harwickさんは言います。「今の時代なら、私のような30代後半のゲイの女性が家庭を持ち、すてきな家に住むことも、奥さんと一緒に子連れで街を歩くことも、中年の危機と全力で向き合うこともできます」と、Harwickさんは語ります。「こういった物語を伝えられるのも、クィアのライフスタイルが世間に受け入れられてきたおかげでしょう」

※「Finding Hannah」は現在、日本語に対応していません。

「Finding Hannah」ではLGBTQ+のキャラクターを自然な形で、物語に織り込んでいます。

「Alba: A Wildlife Adventure」のフェリックス

Apple Arcadeでプレイできる「Alba: A Wildlife Adventure」は、太陽が降り注ぐ森や果樹園を散策し、ゴミ拾いをしながら、島民や景色、野生動物などの写真をカメラに収めていくアドベンチャーゲームです。

この島では、様々な人々との出会いが待っています。上半身に手術の傷痕が残るトランスジェンダーの男性、フェリックスも、そのうちの一人です。

「乳房切除手術を受けたフェリックスは、私が提案しました。あの頃ちょうど、私も自分のために、その手術について詳しく調べていたんです」と振り返るのは、Ustwo Gamesのシニアアーティスト、Fen Beattyさんです。

プレイヤーもそれに気づきました。「ファンからのメールには、傷痕を正しく描いてくれて感謝していると書かれていました。ドレーンの傷痕もしっかり加えたのがよかったようです」と、Beattyさんは言います。胸部の手術によっては、ドレーンと呼ばれるチューブが使われ、それを抜いた時に小さな丸い傷痕が残ることがあります。

「このゲームにはLGBTQ+のキャラクターがたくさん登場しますが、そうした事実も、キャラクター同士の関係も、特に公表はしていません」と、Beattyさんは言います。「カメラのレンズを通して世界を見つめ、小さな発見をしてもらうことが、『Alba』の醍醐味ですからね」

「Alba」に登場するフェリックスの上半身には、乳房切除手術でよく見られる傷痕が残っています。

「Love & Pies」のスヴェンとアンガス

「Love & Pies」は、様々な食材を組み合わせておいしいお菓子を作りながら、アメリアと一緒にカフェを立て直していく、ドラマ性に満ちたパズルゲームです。多様な素性の人々を描いたこのゲームには、アメリアのおじさんのスヴェンと、25年間連れ添ったパートナーで家具職人のアンガスという同性カップルも登場します。2人が恋人同士だとわかるのはゲームがだいぶ進んでからですが、それはデベロッパのTrailmixによる意図的な設定でした。

「私たちはごく自然に物語を伝えたいと考えています」と語るのは、Trailmixの共同創設者でありCEOを務めるCarolin Krenzerさんです。「同性カップルの話も、彼でも彼女でもないノンバイナリーな代名詞も、キャラクターたちが会話を交わす中でさりげなく登場します」

「私たちはあらゆるファンの代弁者でありたいと思っているので、私たちのゲームには現実世界を正しく反映させる必要があるのです」と、Krenzerさんは言います。「プレイヤーは、自分と同じような境遇のキャラクターがゲームで描かれることを望んでいるのです」

「Love & Pies」ではスヴェンとアンガスのすてきな関係など、多様性を尊重した様々な物語が描かれています。

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