MEET THE CREATOR

Ado新曲MVを生んだG子の道具箱

21歳の世界的アーティスト、Adoさんの新曲「Value」が2024年2月23日にリリースされ、ミュージックビデオが「YouTube」上の公式アカウントで公開されました。Lyric Videoと呼ばれる歌詞と映像が融合したスタイルのこのミュージックビデオは、東京藝術大学大学院で学ぶ現役の大学院生のG子さんが、全編をiPadのみを使って制作しました。

キャラクターの作画は「CLIP STUDIO PAINT」を使って、サビのあたりの文字をダイナミックスに動かすところは「Procreate Dreams」を使って作りました

G子さん 東京藝術大学大学院生

「Value」のミュージックビデオ制作の背景を、G子さんに聞きました。

全: 4つのアプリを使い分けて制作

—今回の「Value」のミュージックビデオは、実際にどのようなアプリを使って制作されたのですか。

G子さん: 「キャラクターの作画や動きは『CLIP STUDIO PAINT』をメインで使っています。Lyric Videoなので、歌詞が全編にわたって登場するのですが、質感のある筆を使いたかったので『Procreate Dreams』で作っています。動画の編集や複数の動画素材を合成するコンポジットでは『iPad用Final Cut Pro』と『LumaFusion』の2つのアプリを使いました」

時: 制作の量が増えた

—G子さんはプロのアニメーションクリエイターとして活躍しながら、東京藝術大学の大学院で学んでいます。アニメーションの制作を始める以前から、「CLIP STUDIO PAINT」で絵を描いてきたといいます。

G子さん: 「小学生の頃から遊びで作っていて、本格的に制作し始めたのは、4年くらい前、大学生の時です。iPadで『CLIP STUDIO PAINT』を使って、飲食店バイトの休憩時間を使って描いてました。当時も今も学生なので、家や職場で腰を据えてじっくりで作業できる時間が実はあまりなくて。大学院までの電車の移動時間とか、次の授業までの空き時間とか、そういう時にiPadは制作できるのですごい重宝します。持ち運びができて、場所を選ばない。しかもiPad1台で全工程を作業することもできるので、制作に使える時間ができて、アウトプットの量が増えました。もちろん学校用のノートとしても使っています」

波: iPadで鎌倉の海を撮る

—「Value」のミュージックビデオでは、G子さん自身がiPadで撮影した海の動画もアニメーションの素材にしたと聞きました。

G子さん: 「iPadを持って、鎌倉の由比ヶ浜に撮影に行きました。冬の海に入って、海面すれすれにiPadを寄せて撮りました。寒かったですけど(笑)、海の波のディテールを使ってアニメーションに深みを出したかったので」

G子さん: 「海の映像はアニメーションの素材として使用するために、一旦『CLIP STUDIO PAINT』に動画として読み込んで、必要のない部分を合成した際に抜けるようにグリーンで塗りつぶすという作業を、協力してくれたメンバーたちにもけっこうがんばってもらって、みんなで人力で消していきました」

直: 原始的な動かす喜び

—今回の制作ではアニメ制作用アプリの「Procreate Dreams」を併用しています。それぞれのアプリをどう使い分けたのでしょうか。

G子さん: 「『CLIP STUDIO PAINT』の作画は、設計作業のような感じで、作りながら頭で思い描いた通りのものを形にしていける安心感があります『Procreate Dreams』はより直感的な作り方に向いている印象で、紙に直接絵の具で描いていくのと近いような操作感を得ましたね」

G子さん: 「『Procreate Dreams』は初めて使う人にも使いやすいのではないかと思います。ガンガン描き進めて後からプレビューする、というのができて、プレビューを見て、あ、こういう風に動くんだ!と気づくような、作り始めた最初の頃に感じた原始的な喜びや驚きをまた感じられたのが結構良かったなと思いました」

筆: アナログの質感を活かす

G子さん: 「曲のサビのあたりを中心に、歌詞の文字をダイナミックに動かすシーンがあるのですが、『Procreate Dreams』は筆の種類が豊富で、アナログの筆のようにそれぞれ異なる質感を出せるので、歌詞の文字で質感を全面に出すのに向いてるなと思いました」

質感豊かな筆が豊富な「Procreate Dreams」。気に入った筆を選んでリストを作り、他のユーザーと共有できます。

G子さん: 「もう一つ便利だったのが、使う筆リストをフォルダで共有できる機能です。候補の筆が数十個入ったフォルダをメンバーとアプリ内で直接共有できたので、作業がすごく楽になりました。他にも『Google ドライブ』や『Dropbox』でデータを共有して作業してました」

「Procreate Dreams」は筆の種類が豊富で、アナログの筆のようにそれぞれ異なる質感を出せるので、歌詞の文字で質感を全面に出すのに向いてるなと思いました

色: 豊富なフィルターとレイヤー無制限、それぞれの魅力

—動画編集では2つのアプリを使っていますが、「LumaFusion」と「iPad用Final Cut Pro」を選んだ理由を教えてください。

G子さん: 「作った素材を『iPad用Final Cut Pro』で並べて編集して、『LumaFusion』で色調整して、最終的にまた『iPad用Final Cut Pro』で全部を一本化して完成させる、という作り方をしています。『LumaFusion』は色を変えるフィルターの種類が多くて、自分の思う色に合わせやすかったので、色調整用に使いました。『iPad用Final Cut Pro』はレイヤーが無制限に使える点が良かったので、最終的にこのアプリにデータを集約させました」

—iPadとアプリはG子さんのクリエイティビティにどのような影響を与えていますか。

G子さん: 「アプリごとに良いところがあるので、やりたいことに合わせて組み合わせて使っています。『CLIP STUDIO PAINT』と『Procreate Dreams』も、それぞれを使うことで別の種類のアニメーションが作れる感じがします。お互いに代替物というよりも、別の道具として楽しむ感じでした。『Procreate Dreams』のタイムラプスビデオ機能を使うと、自分のやった動きの記録も素材にできるので、この先使いこなせたらもっとおもしろそうだなと思いました。iPadとアプリは、創作の敷居を下げるのが一番いいとこなんだろうなと思ってます」

G子さんが制作したAdoさんの最新曲
「Value」が視聴できるアプリ

G子さんが全編をiPadで作成した、Adoさんの最新曲「Value」のLyric Videoは「YouTube」内のAdoさんの公式アカウントで公開されています。ダイナミックな文字の動きを含めたすばらしいアニメーションの全編を「YouTube」で視聴できます。

アニメーション制作に使用したアプリ

「CLIP STUDIO PAINT」と「 Procreate Dreams」はiPad専用のアプリです。G子さんが制作に使用した「CLIP STUDIO PAINT」には、iPhone用の「 CLIP STUDIO PAINT for iPhone」も用意されています。

動画編集に使用したアプリ

「Final Cut Pro for iPad」はiPad専用のアプリです。

ファイル共有に使用したアプリ

G子さんの作品が視聴できるアプリ

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