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意思疎通をサポートする文字起こしアプリの挑戦

YY文字起こし -高性能でシンプルな文字起こしアプリ-

音声認識で声や雰囲気を可視化しよう!!

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プロジェクト名: YYSystem開発プロジェクト(株式会社アイシン)
開発リーダー: 中村正樹
ミッション: インクルーシブなデザイン・テクノロジーで誰もが安心して暮らせるデジタル社会を実現する
開発メンバー: 6人

「YY文字起こし」は、その名の通り、音声をリアルタイムで認識してテキスト化してくれるアプリです。加えて、英語、中国語、ベトナム語、ポルトガル語、スペイン語など他言語への翻訳機能や漢字のルビ表示など、優れた機能性でユーザーから根強い支持を集めています。

「YY文字起こし」の画面。声を認識して、すばやくテキスト化してくれます。

この「YY文字起こし」の開発を主導しているのが、株式会社アイシンで「YYSystem開発プロジェクト」を率いる中村正樹さんです。開発に着手したきっかけを、中村さんは以下のように語ります。

「法人で使っていただいている『YYProbe』という会議アプリ(主に聴覚に障がいのある人への支援用途)を開発しておりましたが、個人ユーザーの日常生活での困りごとの対応要望が非常に多く、個人の方が気軽に使えるアプリを開発しようと思いました。

また、『YYProbe』は企業で使うことを想定しているため、機能の変更がサーバー機能の改修なども必要で時間がかかりました。『YY文字起こし』はiOS端末で完結する仕組みにして、ユーザーからの要望にすぐに対応したかったのも作った理由の一つです」

操作性を細かくカスタマイズできるのも「YY文字起こし」の大きな魅力です。

開発においては、利用者の声をアプリに反映させて、利用者と一緒に開発を進める“インクルーシブデザイン”を大切にしていると語る中村さん。「X」などソーシャルネットワークでユーザーと意見交換し、機能の改修・追加を柔軟に行い、インクルーシブデザインを実践しています。その機能性から、聴覚に障がいのある人やコミュニケーション支援が必要な人にも利用され、多くの反響が届いていると言います。

「聴覚に障がいのある方の日常的な利用をはじめ、聴覚情報処理障がい(LiD/APD)などの、聞き取りの障がいがある方のコミュニケーションに『YY文字起こし』を使っているそうで、様々なシーンで活用いただいています。日常生活が変わったというお声をいただき、利用者にとって手放せないアプリになってきていると感じています」

利用者の声をアプリに反映させて、利用者と一緒に開発を進める“インクルーシブデザイン”を大切にしています

中村正樹さん

2024年1月の能登半島地震発生の際には、直後から「YY文字起こし」の利用時間制限を無制限として(通常は1日2時間)、被災者支援を行いました。

「駅などの公共施設でのアナウンスが聞こえない、助けが来ても耳が聞こえないので音に気付けない、発話が苦手で声を出して助けを呼べないなど、有事の際こそ多くの支援が必要で、今回の能登半島地震で、そのことが本当によくわかりました。身近なiPhoneなどのモバイル端末アプリが、支援が必要な方をサポートできると思っています」

「YY文字起こし」はApple Watchにも対応し、手元で文字起こしを確認できます。

現在の開発体制は、「YY文字起こし」の開発は中村さんが一人で担い、営業などを含めると計15名ほどのチームとなっているそうです。「YY文字起こし」の今後については、中村さんは以下のように展望を語ります。

「今後は、大きく3つのことを考えています。一つは音声認識の精度向上と生成系AIの活用による意思疎通支援の高度化、二つ目は障がい当事者の雇用の幅が広がるアプリや機能の開発、三つ目が震災など有事の際に当事者の助けとなる機能の開発です。そして、障がいのある当事者みんなが持っているアプリに成長させ、当事者が困りごとを解消できるプラットフォームアプリにしていきたいと思っています」