注目のデベロッパ

楽しく、安全な登山をすべての人に

ヤマレコ 山登りがもっと楽しくなる登山アプリ

圏外でも現在地がわかる登山地図アプリ

表示

会社名: 株式会社ヤマレコ
創業者: 的場一峰
会社のミッション: 一人ひとりの登山を最高の体験に。
チーム人数: 6名

地図・コミュニティアプリの「ヤマレコ」には、数多くの登山コースやハイキングルートに関する情報が集約されています。また、コースの距離や標高差、所要時間がわかるだけでなく、実際にそのコースを体験した人のレビューや写真を閲覧したり、コメントで交流したりもできるとあって、登山やハイキングには欠かせないアプリの一つとなっています。

この「ヤマレコ」を生み出したのが、日本アルプスを擁する長野県松本市に拠点を置く株式会社ヤマレコ代表の的場一峰さんです。的場さんが所属していた山岳会の会報を電子化して公開するための手段として始まった「ヤマレコ」は、2005年にウェブ版の開発が始まり、2016年にアプリがリリースされます。その道程は、まさに試行錯誤の連続だったと振り返ります。

「ウェブサイトを作ったことはありましたが、地図アプリを作る技術はなく、まったくのゼロからの出発でした。まずは地図上で現在地を表示できるだけのアプリを作り、そこから少しずつ学びながら機能を追加していきました」

学生時代から頻繁に山に足を運ぶ登山者である的場さんは、山の愛好家ならではの視点で数々の機能を実装していきます。地図上にマーカーを追加して山の情報を他の登山者に伝える「クチコミ」機能、登山中に帰りを待つ家族らに現在地を知らせる「いまココ」機能など、より便利に、そしてより安全に登山するための創意工夫で、「ヤマレコ」は着実にユーザーの支持を得てきました。

「登山の記録を残すウェブサービスとして開発をはじめ、登山中の山の状況や遭難事例などを共有することで、より安全に登山をしていただけることを目的にしていました。以降、『また山に行きたくなる』というコンセプトのもと、登山を楽しみ、無事に家に戻ってきて、また山にチャレンジできるような仕組みを作ってきました」

15年以上にわたる開発の中でも、とりわけ印象に残っているのはApple Watchアプリの開発だったと的場さんは語ります。

「少なくとも、当時はApple Watch向けの開発に利用できるライブラリが存在しておらず、最初は開発をあきらめていました。しかし、『ViewRanger』というアプリがApple Watch用の地図アプリを開発していることを知り、何か工夫すれば開発自体はできるはずだと希望を持ってチャレンジしました。そして、Apple公式のフレームワークを見て学んでいくと、ロールプレイングゲームのように自分のキャラクターとタイル画像のマップを重ね合わせれば地図アプリを開発できることに気づいたことで一気に開発が進み、2019年6月にリリースできました」

このApple Watchアプリは、登山中も手元ですばやく情報を確認できるとあって、多くのユーザーに愛用されています。さらに、標高グラフ上の現在地や下山予想時刻を確認できるコンプリケーションをApple Watchの文字盤に追加できるのも、登山者にはうれしい機能です。

「ヤマレコ」のApple Watchアプリの画面。地図や現在地の確認に加え、コンプリケーションを文字盤に追加できるのも便利です。

現在、「ヤマレコ」の開発チームは的場さんを含めて6人。的場さんが一人でアプリ開発とサーバ運用を担い、ウェブサイト版をエンジニアの従業員1名と分担して開発しているそうです。加えて、広報や税務を担う的場さんの家族、そして創業時から開発をともにする社外デザイナーなど、チームメンバー全員が登山愛好者だと言います。

「アプリのテストを兼ねて自由に登山に行ってもらっています。社内メンバーによる登山も不定期に行っています。妻は竹を割ったような性格で言いたいことをはっきりと言ってくれ、サービスのことを知らない人の視点で意見をもらえるので助かっています。ほかにも、山のデータを整備するために情報を調査して記事を書いたり、登山道のデータを入力したりしていただいているスタッフが2名います。地道な調査と執筆を根気よく続けてくれるのは、山で培った忍耐力のおかげではないかと思います」

最後に「ヤマレコ」の今後について伺うと、「まだまだやれることは多くある」と的場さんは抱負を語ります。

「登山にも日帰り、テント泊、山小屋泊や、トレイルランニング、バックカントリー、沢登り、クライミングなど様々なジャンルがあります。『一人ひとりの登山を最高の体験に。』というミッションを追求するためには、山に関わるアクティビティを想定し、より細かいサービスが必要になります。また、現在は海外の方々が登山を目的に日本を訪れています。インバウンド向けに多言語でのコンテンツ提供も行っていきたいし、海外の山の情報についてもコンテンツを増やしていきたいと考えています」

アプリやサービスの開発は作ってからがスタート。地道に開発を積み重ねた人には、きっとチャンスが巡ってきます

的場一峰さん

また、目下アプリ開発に取り組んでいるデベロッパたち、そして未来のデベロッパたちに向けて、的場さんは自身の経験を踏まえて以下のようなメッセージを投げかけます。

「アプリやサービスの開発は作って終わりではなく、作ってからがスタートです。最初は誰にも相手をされません。自分たちの理想と比べて足りない状態でスタートすることになります。いい評価もなかなかもらえません。でも、地道に開発を積み重ねた人には、きっとチャンスが巡ってきます。私もまだ長い道のりの途中です。アプリを通じて一人でも多くの人の生活をより良いものにするために、一緒に一歩ずつがんばっていきましょう」

その他の「注目のデベロッパ」をチェック